福島原発1号機炉心溶解 政府発表はおかしくないか?

12日、原子力安全・保安院が福島第1原発1号機の炉心溶融メルトダウン)を認めた。
炉心溶融は3月11日の地震直後24時間以内に起きていたのではないのか、それを政府は隠していたのではないかと私は疑っている。
原発事故の直後、米国政府は80キロメートル圏の住民を避難させるべきだと日本政府にせまり、自国民を東京から非難させた。
当時、私は日本政府の発表を鵜呑みにしていたので、この米国政府の対応を大袈裟だと思っていた。
しかし、この時炉心溶融がおきていたのであれば米国政府の対応が正しかったであろう。
今日の報道では1号機のみならず、2号機、3号機でも炉心溶融がおきている可能性があるとの事である。
誤解をおそれず簡単に言うと、原子力発電は、燃料棒に3〜5%含まれているウラン235の核が中性子を吸収して分裂を起こし、そこから新たな中性子が2、3個飛び出てくる。この中性子が他の核に吸収されることを繰りかえすのが核分裂連鎖反応であり、その際に出る熱エネルギーを利用して蒸気を作り、タービンを回して発電する。
この中性子は高速(秒速1万4千キロメートル前後)で飛び出すので、そのスピードを減速させ、できるだけ多く核分裂連鎖反応を起こさせるために減速材として水を使う。
軽水炉型と呼ばれる原子炉の中は水で満たされており、水が中性子の飛ぶスピードを減速させ、止めるのは制御棒の役目である。
このコントロールできる核分裂連鎖反応を「臨界」と呼ぶ、コントロールできない状態になることを「超臨界」と呼び、原子爆弾の爆発である。百万分の一秒で数千万℃の熱を発し、熱と爆風ですべてを破壊する。
核分裂反応を遮断する制御棒は炭化ホウ素、カドミウム合金、インジウムなどを含んだステンレス棒だそうだが、この制御棒は1800℃で溶ける、制御棒が溶けると核分裂反応を止めることはできなくなる。
もしも、冷却水がなくなると再び制御できない核分裂が始まり(再臨界)、原子炉格納容器が大爆発する可能性があったのである。
これまで政府は炉心溶融メルトダウン)は起こっていないと発表し、チェルノブイリ原発事故とは違うと発表してきた。
しかし、初期の段階で炉心溶融が起きていたのであれば、核分裂連鎖反応を制御する手段がなかった可能性が非常に高く、これまで以上の大惨事が起こっていた可能性があったのである。
島型原子爆弾で使用された濃縮ウラン(86%濃縮)は約20キログラムである。
東電のホームページによれば、福島第1原発1号機の燃料棒は400体、2号機、3号機は548体、一本が直径1センチ、長さ4.35〜4.47メートルである。
濃縮度は約4%なので広島型原爆と単純比較はできないが、ウラン装荷量は1号機が69トン、2号機、3号機が94トンと書いてあるので、広島型原爆の何十倍か、何百倍かのウランが入っているということであろう。それらのウラン燃料が次から次へと核分裂を起こしていれば、いったいどれだけの被害が出ていたのか。
少なくとも米国政府は、早い段階でその事態に対する対応をとったものであろう。
その根拠は日本の「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」の予測結果と、米国政府独自の放射能測定結果から判断したのではなかろうか。
事故直後から民法テレビで解説していた東京工業大学の澤田哲生助教は、気象庁は「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」の予測結果を国民に知らせることなく、国際原子力機関IAEA)には逐次報告していたWill6月号47ページに書いている。その報道は新聞でも見た記憶がある。
また、澤田助教は政府が4月11日に国際原子力事象評価尺度をレベル7に上げた事に対して、「(放射能の)ほとんどの放出は3月12日から16日頃に終わっている。今回の格付けは、この放出量を事故から一か月後に“追認”した結果である」と書いている。
この政府発表も「後出し」、今回の炉心溶融も「後出し」、なんでこんなに国民に隠し事をするのか。
今日の新聞各紙には、東電の発表として、「1号機ではこれまでの注水量1万トンのうち約5千トンが漏れ出たと推定、原子炉建屋内には約3千トンの汚染水がたまっている可能性がある。また、遠隔操作ロボットが13日に1号機原子炉建屋1階南東側の二重扉付近で、毎時2千ミリ・シーベルトの高い放射線量を計測した。」との記事が載っている(読売新聞)。
そうであるなら、放射能を含んだ水蒸気が大気を汚染し、建屋から流れ出た水は海を汚染している。
政府発表の放射能値はそれらも合わせての数字なのか。
また、この汚染された水は原子炉圧力容器と原子炉格納容器ともに小さな穴が開いていることが原因である書かれているが、私はこれらも本当はもっと大きく壊れているのではないかとの疑いを持っている。
そして、以前、原子炉事故の原因が津波地震か定かでないと書いたが、今日のインターネットニュースでは、地震で原子炉の接続部分などが破壊されて水が漏れて無くなった可能性があるとの報道がある。
そうであるなら、津波の心配の無い原発も危険なことになる。