政権交代と「新平家物語」

吉川英治の長編小説「新平家物語」を読み終えた。
文庫本で全16巻、昭和25年2月から7年間にわたって新聞に連載された小説だ。
私は2〜3か月かけて読んだが、吉川英治氏の文章がうまいので何年かかけて読み直せばいいかなとも思っている。
16巻目を読んで「俚言口碑」なる四文字熟語があることも初めて知った。「俚言」とは通俗的な言葉、「口碑」とは伝説という意味だそうである。
この物語は、平清盛の少年期から平家が天下を取り、そして滅亡していく過程、源義経兵庫県の一の谷、香川県屋島山口県壇ノ浦の戦いと平家を追い詰めていく場面。
源頼朝がそれまでの公家政治から武家政治にとって代わると同時に、政権奪還の最大の功労者であり、実弟の源義経を追い込んでゆき、最後は東北の独立勢力であった藤原秀衡の息子泰衡の手によって義経が殺され、その泰衡も頼朝に滅ぼされ、ここに源頼朝の天下統一がなるが、その頼朝もその10年後、53歳で死ぬ。
その後を継いだ頼朝の妻北条政子も長くは続かず鎌倉幕府も滅亡していくのだが、この小説は頼朝の死で終わる。
著者の「完結のことば」によると、「本文は『平治物語』『保元物語』『平家物語』『源平盛衰記』『義経記』『吾妻鏡』といったもの、すべてに踏みまたがっており、それに一つの系列とわたくしの創意を与え、縦横に織ったのが『新・平家物語』であります。」ということで、あくまで小説であることを強調する。
これを読むまでの私は、義経が衣川では殺されず、遠くモンゴルまで行ってチンギス・ハーンになるという物語のほうに興味があったので、正確な歴史を知らずにいたので大変面白かった。
これを読み終えて、古典の平家物語の冒頭文「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし 猛き者も遂には滅びぬ ひとえに風の前の塵に同じ」という言葉をしみじみと噛みしめた。
現代政治は民主党政権から自民党政権に変わったが、まさに民主党政権は春の夜の夢のごとく終わった。
今回の安倍内閣がそうならないように、時には地方からの強烈な意見具申も必要となるであろう。