日本のエネルギー政策について

7月25日(木)高知会館で高知県メタンハイドレート開発研究会主催の講演会があり、資源エネルギー庁、石油・天然ガス課、上条課長補佐の講演を聞いた。
今年2月から3月にかけて、渥美半島沖で探査船「地球号」がメタンハイドレートの試掘を行い成功した。今回の講演はその報告である。
それによると、現在メタンハイドレートは平成30年度を目途に、商業化に向けた技術の整備を実施中であるが、商業化プロジェクトについては記載がなく、商業化の目処は立っていない。
カナダでH19、20年度実施した陸上産出試験は、約5.5日間、累計生産量約13,000m3、平均生産量約2,400m3/日であったが、H25年2月からの渥美半島沖の海上産出試験は、約6日間、累計生産量約120,000m3、平均生産量約20,000m3/日であり、平均生産量はカナダの8.3倍であった。
私はこの生産量の差の原因と将来、商業化に向けた取り組みの中での課題について質問した。
上条課長補佐の説明によると、この差は地層の温度差であろう、カナダの永久凍土は温度が低いのが原因であろうと推測される。
また、今回の試験の生産量では、商業化するには生産量が低すぎる、この10〜20倍の生産量が必要である。
生産量が低かった原因については今後調査結果を分析して解明するとの回答であった。
先は長いが、継続して調査研究は進める必要があると思う。
ちょうどこの時期にジャーナリストの石川憲二氏が書いた「化石燃料革命」(日刊工業新聞社)を読んだ。
それによると、石油をあと何年掘り続けることができるかは、掘削技術の進化と掘削費用、そして原油単価に左右される。
つまり、深海の海底深く存在する原油についても、原油単価が高ければ、掘削単価が高くても採算が取れるということである。
メタンハイドレートや超深海油田ガス田も原油単価との絡みで、採算が合うかどうかで開発が進むようである。
では原油単価はいくらまでなら、メタンハイドレートなどの開発が進むのであろうか。
石川氏は世界各国のこの当時のガソリン価格を一覧表で比較したうえで、日本のガソリン価格を分析し、原油価格がいくらまでなら日本国民が耐えられるのかを分析試算している。
それによると、(この本の出版時期である平成24年7月現在の)「原油を1バレル100ドルで輸入したとすると、1ドル=80円で計算すると(1バレル)159リットルで8千円だから(原油価格は)50.3円/リットルである。これにコストと利益33円、税金56円を加えて販売価格は139.3円となる。」と書いている。
本日の原油のニューヨーク先物価格が107ドルとの報道があるのでこの数字に近い、また、対ドル円相場は約100円なので13円ほどアップする、それでもリッターあたり約143円である。
最近の高知県内のガソリン価格は152円〜156円で約10円の差があるが、国内でも地域差があるのでこんなものであろう。
この本では次のページに原油価格とガソリン価格の一覧表を載せており、この表を現在の1ドル=100円で修正すると、原油価格が140ドルになった時に、日本のガソリン価格は約172.4円である。
この価格は、我々は経験済みであり、騒ぎになったことも覚えている。
この石川氏の著書は大変興味深く読んだ。高知県沖に大量にあると云われるメタンハイドレートの開発をはじめ、日本のエネルギー戦略を考えるうえで大変参考になる本であった。