オーストリア視察その2

16日(月)は旅の疲れのために寝過ごすことを考えて、西内隆純県議に起こしてもらうことを頼んでいたが、何度か目覚め、午前6時には目が覚めていた。
午前6時45分頃食堂に行くと、梶原、西内健両県議を含めて3人の県議がもう食事をしており、彼らは一足先に食事を済ませて朝の散歩に出かけた。
ホテルの近くに旧王室の屋敷であった広い公園がある。私も後で行ったが、そこは別の入口で閉まっており散歩出来なかった。

午前8時30分ホテル発、上の写真の駅から地下鉄に乗り、さらにバスを乗り変えてヨーロッパ最大の木質バイオマス発電所に9時過ぎに着いた。

エヴァさんが入口を間違え、工場の周りを30分ほど歩かされた、膝痛を抱える私はこれには参った。
見学者用の部屋で、この工場の退職者でボランティアで説明役をしているハッカー氏の説明を受けた。

広大な敷地に天然ガス火力発電所が3基と、木質バイオマス発電設備が1基ある。
この1基が、発電出力24メガワット、高知県で予算のついた二つの工場が、いずれも5メガワットなので約5倍近くの大きさだ。
稼働は2006年、13年間稼働させる計画で、ここで発電された電気は2019年までは政府が市場価格3.5セント/kwhの約3倍の値段、10.5セント/kwhで買取る、この買取価格がなければ赤字経営になるという。
EUとオーストリア政府からの補助がなければ赤字となる実験施設だ。
この施設建設の背景は京都議定書二酸化炭素削減計画であり、EUが削減量を決めてEU各国に割り当て、それに基づいてオーストリア政府がこの施設を造ったそうだ。
この工場の発電出力は、10万人の人口の市の電力をまかなえるそうだ。
燃料のチップは下の写真のように日本のそれより少し大きい、7〜8センチ角ほどある。

含水率は42%、ボイラーに下から風を送って炉の中に渦巻きを作って燃焼効率を上げているそうだ。
この工場の設備はボイラーと缶だけはフィンランド製で、それ以外はシーメンス社が造ったものだ。
また、日本では産業廃棄物として処理費用が懸念されている焼却灰の処理は、埋めたり、道路舗装の材料として使われるそうだ。
埋めていいのであれば処理費用の心配はいらない。
オーストリアは冬場が寒い、冬期はここで作った温水を市内に送り、暖房用に使うため発電効率は夏期に比べて低いそうだ、熱効率の平均は50%(夏期37%、冬期80%)、電力と熱と両方を使う事を前提にしている。
この工場は1時間で24トンのチップを燃やす、すごい量だ、24時間運転で年間運転時間は約8千時間、年に3週間程度の保守点検を行う、今はちょうど点検中であった。
チップを保管する巨大なサイロがあった。冬場は雪のために計画通りにチップが集まらないためにこのサイロに保管するが、チップにすると発酵するため4日間しかおけないそうだ。
オーストリア国内も、西側はアルプスに近く山が険しい上に、冬場は雪のために伐採費用が高くかかるのがネックになっているという。
また、原木の供給範囲は50〜80キロであり、ウィーンは国内では東の端にあるのでチェコスロバキアハンガリーなどの国から原木を輸入する。
これらの国には電気を送っているので、原木輸入との収支は均衡しているとの事である。
日本で想像していたのとは全く違い、木質バイオマス発電のコストは予想以上に高い。
オーストリアは火力発電の主力燃料である天然ガスを、ロシアから高く買わされているが、そのガス発電の2倍の発電単価がかかり、それは世帯当たり年間50ユーロ(現在6750円)の国民負担となっている。
説明を受けた後で工場内を見学、昼まで視察した。
午後は1時にオーストリア環境・生命省を訪問し、2時30分まで、職員のモーレ女史、ラマー氏から国全体のエネルギー政策について説明を受けた。

その後一旦ホテルに戻り、午後4時からはホテルの喫茶室でエネルギー局のパウリッシュ氏から同じようなエネルギー政策について説明を受けた。

彼らの説明の中でも、午前中に視察した木質バイオマス発電設備の稼働から13年後が課題になっていることがわかった。
高知県での工場の稼働予定期間は20年、その期間は32円と24円の単価で売電できる事が法制化されている。その後の予定は各社で異なる。
オーストリアでは稼働から13年後の2019年に黒字化する、つまり稼働を続けることはかなり難しそうな印象を受けた。
一日に3回もエネルギー政策について講義を受けるとさすがに頭に良く入る。
オーストリアは国を挙げて再生可能エネルギーに取り組んでおり、木質バイオマス発電は午前中に見学した大工場以外に、国内各地に、今後視察予定に入っている地域単位の小規模発電設備が沢山あるそうだ。
それらの様子は後日報告します。