ニュー山王ホテル

日高義樹氏(ハドソン研究所首席研究員)の近著「アメリカはいつまで日本を守るか」を読んでいて、米軍管理で米軍人専用の、日本人の入れない「ニュー山王ホテル」なるホテルが東京のど真ん中の広尾にあることを初めて知った。
正確に言うと1983年に、山王ホテルの代替施設として日本政府が作って米軍に提供したホテルだそうなので、その当時話題になったであろうから忘れていたのであろう。
国内には沖縄、横須賀に米海軍基地、東京に横田基地、岩國に米海兵隊基地、三沢に米空軍の基地がある。
戦後68年、国内に米軍基地がこれだけあり、未だに独立国家の根幹である防衛を米国に頼らざるを得ない体制を容認している。
おかしいだろう、この国は。
この本の238ページに次の事が書いてある。
米国のジェームス・シュレジンジャー元国防長官、カーター大統領の安全担当補佐官だったズビグニュー・ブレジンスキー博士、「文明の衝突」を著したサミュエル・ハンティントン博士、キシンジャー博士の4人にインタビューした時の話として、「この人々によれば、第二次大戦後、戦勝国のアメリカが世界を動かすにあたって最も重要だと考えたのは、アメリカが日本とドイツをその支配下に置き、軍事的に保護するとともに、この二つの国の経済力を勢力下に抑えることだった。」
その構図が今崩れようとしている。
40数年前、反米軍基地闘争が盛んに行われており、中核派革マル派などの新左翼と呼ばれる組織がこの闘争の主役であったが、彼らと話していると祖国日本という考え方が全くないので彼らの仲間に入ることは全く考えなかった。
現在はそれらの運動も低迷し、沖縄の反基地闘争が違った形で継続している。
40数年前の闘争の主役達の祖国はソ連、中国を公言する日本人であった、現在沖縄の反基地闘争の主役達はそういう人よりも、全く防衛問題を考えない人達の方が多いであろう。
初めに挙げた日高氏の著者は「戦争できなくなった超大国と、日本は今後どう付き合うべきか」という副題が付いている。
オバマ大統領はシリア攻撃の判断を議会に預けた。
米国において戦争をするかどうかの判断は大統領の専権事項であったが、それを大統領自ら変えた。
米国は戦後もほとんどの期間何処かで戦争を継続してきた、今もアフガニスタンで戦闘が行われている。
その米国が戦争のできない国になった。
これを見て中国は防空識別圏を設定したと宣言した、ロシアも今後なんらかの動きをするであろう。
米国高官がどんな発言しようとも、尖閣諸島で日中が戦闘開始した時に米軍が即動くことは期待できない。
自衛隊が独自で戦うことになる。自衛隊憲法9条の制約の中で専守防衛、すなわち本土決戦用に兵器を整備してきた。
攻防は一体とはいえ攻撃力は米軍に頼らざるを得なかった。
それ以上に心配なのは、自衛隊は長く実戦を想定した整備をしてきていない。
自衛官士気と能力はおそらく世界最高レベルにあると思う、米軍が一目も二目も置いているぐらいだ。
ある場所で戦闘が始まると、そこに対して武器弾薬、食料などを運ぶことを兵站と呼ぶ。
日本は帝国軍隊の時代からこの兵站をおろそかにした。自衛隊は予算が無くて兵站が弱いと言われている。
「たまに撃つ、弾が無いのが、玉にキズ」
以前、自衛隊内の川柳大会で入賞した作品だ。笑い事ではなくなってきた。
この本を読んでいた時、特定秘密保護法案の採決で大騒ぎしていた。
マスコミは産経新聞以外はほとんどが反対の大合唱、マスコミによる煽りは、戦前では日露戦争後のポーツマス条約後の日比谷公園焼打ち事件などの反対運動、日米開戦前夜の報道、最近では民主党政権成立前数ヶ月のマスコミ報道など、マスコミがこぞって国民を煽り、大多数の賛成、又は反対で決まる事はことごとく間違うと思っていい。
今日の高知新聞一面には、共同通信の世論調査で安倍内閣の支持率が過半数を割ったと、誇らしげに書いてある。
これだけマスコミが有る事無い事を煽れば国民は正確な判断が出来なくなるであろう。
有る事無い事と書いたのは、7日の産経新聞の産経抄欄に、朝日新聞6日付に載った「規制の鎖あなたにも」と題する特定秘密保護法案の危険性をイラスト入りで解説した記事を取り上げ、防衛産業で働く男が、「あまり知られていない」発射に失敗した北朝鮮のミサイルの軌道について同窓会で話し、その内容を同窓生のA子がブログにアップしたら、捜査機関から取り調べを受け有罪になったという話が紹介され、「実際にはこんなケースはあり得ない」と書かれてあったからである。
この法案の反対デモに参加した人のインタビューを聞いていて、明らかに間違った説明を受けているのだろうなと思われる話があった。
但し、私は産経新聞以外は読まないので、朝日新聞の記事は知らない。
written by iHatenaSync