阿南惟茂元中国大使の講演会

12日(火)12:00から高知市で、時事通信社の主催する内外情勢調査会があり、講師が阿南惟茂元中国大使だったので出席した。
阿南氏は10年ほど前まで(2006年まで)中国大使を務め、外務省のチャイナスクール の重鎮などと紹介されており、大使時代におきた瀋陽の日本総領事館北朝鮮人亡命者駆け込み事件に際しては、中国に配慮し過ぎたなどと批判された。
また、父上は大東亜戦争終結時に徹底抗戦を主張していたが、敗戦が決まると割腹自決を遂げた阿南惟幾陸軍大臣であり、その最後の責任の取り方を私は尊敬していた。
私は、高村正彦先生が外務大臣の時に秘書官として働いた大学の先輩から、阿南大使は立派な人だとの評価を聞いていた。
そこで実像はどうなのか、講演内容に大変興味があった。
都合で12時40分頃会場に入ったが、食事時間があるので、講演会が始まってからは10分程経っていたのかと思われる。
講演会の演題は「阿南惟茂氏の中国最新事情」
内容を紹介しても良いのかどうか未確認だが、少し紹介すると、
・中国政府の発表する数字は当てにならないので、GDP成長率二桁成長の時も、実質は4%台であっただろう。
社会主義には競争概念がなかったので、毛沢東が中国政府を作ってからも30年間は進歩がなかったのを、日本を視察して驚いた鄧小平が劇的に変えたが、その弊害が今出ている。
人口の3%(阿南氏は人口13億4千万人と言ってたので4020万人か)が富裕層、貧困層人口(先進国では1日1ドル程度の収入がある層を言うが、中国では餓死しない程度の収入のある層)は8,300万人である。
日本などの外国に来て爆買いをする人達は富裕層の一部である。
・都市にやたらと高層ビルが建っているが、テナントが入っていない。数年前に完成した北京で一番高いビルは、最初の一年間は全くテナントが入っていなかった、次の一年間も同様で3年目に56階以上にホテルが入ったが、それ以下の階は何もテナントが入っていないビルであった。(ビルが乱立する都市に人が住まないゴーストタウン「鬼城」が国内に幾つかある事は、このブログで紹介した)
・日本人は、上海や北京などの大都市にビルが乱立する様子を見て中国の発展はすごいと思うが、地方へ行ってみると数十年前と全く変わっていない。
・中国の輸出入がここ10年以上大幅に伸びたが、その6割を外国の会社が支えている。
社会主義市場経済とは何かを中国政府の人が聞いてくる。自由主義経済が分かっていない。貧富の格差が拡大する要因だ。
・日本とアメリカがAIIBアジアインフラ投資銀行に参加しないのは懸命な判断だ。
・国有企業の弊害、国有企業はGDPの3割以下を占めるが、雇用をやたら増やしてGDPを嵩上げするだけだ。
・ソフトインフラが未整備である。法律、証券取引所、金融制度(4大商工銀行)などである。先進国では金融機関の不良債権の比率が10%を越えると問題になるが、中国の4大商工銀行は、その比率が22%であった。その不良債権を0.数%に下げたが、それは不良債権会社に移し替えただけだ。
・今後は失業問題 (7%)、大気汚染などの環境問題、貧富の格差などを解決できなければ13億4千万人を救うことは出来ない。
・今後の日中関係は、日本・中国共に国民の8割が相手を嫌っているが、中国の場合は上を見て判断するので変わると思うが、日本は変わらない。それが心配だ。中国の内政が混乱し、その鉾先が外国に向けられる事があれば心配だ。
などが午後2時までの講演内容の一部である。
私は、中国問題評論家の宮崎正弘氏のインターネット配信ニュース(誰でもアクセス出来、無料です)などで、中国や香港からもこのような情報が流れているのは承知しているので驚かないが、阿南氏が話すとまた別で、私の得ている情報が本当なのであろうと思った。
講演会に出席して大変勉強になりました。
阿南惟茂氏が、中国べったりの方ではないことがよく分かりました。私の先輩が言っていたように立派な方でした。