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「沖縄の不都合な真実」を読んで

著者の大久保潤氏は日本経済新聞社の現役記者、元那覇支局長、篠原章氏は沖縄、経済、音楽分野で活動する評論家だ。
2015年1月20日初版発行で、8月10日に第10刷と書いてあるので相当売れているのであろう。
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この本を読んで、普天間基地辺野古移設反対運動における沖縄県議会の反対決議や、沖縄県当局の反政府姿勢、翁長知事が自民党沖縄県連幹事長を経験しながら那覇市長時代に米軍基地反対に舵を切り、革新勢力と一緒になって県知事選挙を戦った理由がよく分かった。
また、私が仲間内と思っていた沖縄県議会自民党の行動が理解できないでいたが、この本の分析だとよく分かった。
普天間基地移設問題に対する著者の態度は「基地反対運動は、『沖縄の心』や『平和への願い』を強調しながら『基地反対・移設反対』を唱えますが、私たちは、辺野古移設は税金の壮大な無駄遣いになる可能性があるがゆえに支持できないのです。」と書く。
そして、安倍総理が2012年12月に当時の仲井真知事に対して、2021年まで3千億円台の沖縄振興費を約束したことに関して「これによって、沖縄社会は再起が難しい末期症状に入ったと思います。半世紀も薬漬けにされた人が投薬なしに自立することは絶望的に困難です。なぜ、こんなにわかりやすい依存症の弊害に誰も本気で声を上げないのでしょう。」
と書く、これがこの本のテーマであろう。
この本の内容は極めて公正な分析であると思った。しかし、賛成派も反対派もそれぞれ批判されているので双方からの批判が著者に来るであろうが、ジャーナリストとしては素晴らしい方である。
著者は次のように沖縄県の指導者達を批判する「『基地には反対だが、基地の見返りである振興資金に依存する公主導・官主導の経済はこのまま続けたい』と言う集団であり、これらを沖縄の『支配階級』『エスタブリッシュメント』『旧体制』などと呼ぶ。」
支配階級とは沖縄県当局、県議会、与野党を問わず政治家、公務員、教組、労組、振興資金に群がる企業経営者などである。
彼らが共同してとる日本政府に対する行動の目的は次の通りだと分析する、「米軍基地反対の示威行動が、本土政治家の沖縄に対する贖罪意識を誘い出し、それが沖縄振興予算の増額に直結する。」
この行動は沖縄県人以外の我々にも分かる。
しかし、「琉球大学OBのエリートを中心とした閉鎖的な支配階級が県内権力と一体化しているため、沖縄には県内権力批判をするマスコミや労組、学識経験者などの左翼勢力が育ちませんでした。女性や子供、障害者ら社会的弱者が放置され、中小・零細企業の労働者は搾取されています。これが沖縄における最も深刻な基地被害です。」との記述は県外人にはよく分からない。
また、翁長知事の昨年の県知事選挙に向けての行動については、那覇市長四選目のときの琉球新報の次のような社説を紹介した「ある意味で翁長氏は『鉱脈を掘り当てた』のだ。保守陣営が基地問題で県民の意を体して行動すれば、革新陣営の『水源』は枯れ、保守は盤石の態勢となる。それが実証された格好だ」
その上で保守本流の翁長候補が辺野古移設反対を強硬に主張したのは、革新退潮の穴埋めを自ら進んで実践したことを意味します。『革新が政府に対峙し、保守が政府と交渉する』という阿吽の分業関係が崩れ、保守内部で対峙と交渉というふたつの役割を同時に引き受けなければならない時代に入ったという事でしょう。」と分析している。
これで翁長知事の一連の行動がよく分かったし、現在安倍内閣が翁長知事と面談を再開した理由も分かる。
前にこのブログで沖縄県の市町村の野球場整備について書いたが、それについてもこう書いてあった、「翁長知事が那覇市長時代に巨人軍のキャンプを誘致した沖縄セルラースタジアム那覇の建設費は約70億円のうち約50億円が防衛予算です。巨人誘致と日本の防衛に何の関係があるのでしょうか。」
その他の表題を紹介すると、「第3章「基地がなくなれば豊かになる」という神話」、「第4章広がる格差、深まる分断」この章には「左翼がいない不幸」と題する項目がある。
私は沖縄の反米軍基地闘争をやっている勢力は現地マスコミを含めて全て左翼勢力だと思っていたが、そういう意味ではなかった。
読み応えのある本だ。