安保関連法案の攻防

安保関連法案の参議院特別委員会の審議は大詰めを迎え、16日午後の横浜市での地方公聴会を終え、午後6時30分から最後の質疑を開く予定が、民主党共産党などが国会の理事会室前の廊下を占拠して理事会の開催を妨害し、今朝(17日)午前8時50分から理事会を再開するとの報道が流れている。
国会は言論の場ではなくなった。
反対する野党は「大多数の国民の声を聞け」と盛んに言ってるが、13日投開票があった山形市長選挙は安保関連法案を争点にして戦い、民主党は岡田代表、枝野幹事長、長妻代表代行などが現地に出向いて大々的に梅津候補を応援したが、自民党系の佐藤孝弘が当選した。
山形市民は民主党のいう国民ではないのか。
今朝の産経新聞には16日、菅官房長官が記者会見で、東シナ海における中国のガス田開発の16基の海上施設のうち、すでに炎が確認されている5基を含め、計7基で開発が進んでおり、13日に日本政府から外交ルートを通じて中国政府に抗議したと正式に発表したとの記事がある。
先日BSプライムニュースに出演した安倍総裁特別補佐の萩生田光一衆議院議員は、炎が出ているのは1基だけだと発言したが、5基は炎が出た事があるという事だろうか。
海底ガス田の掘削技術に関しては世界一流の技術を持っているといわれている日本は、当初から、掘削しても海底パイプラインを沖縄、九州などに引いたら採算が合わないという事でこの地域のガス田開発には消極的であった。
中国にしても距離的には同様のはずだ。それが継続して増設しているという事は別の思惑があるのだろう。
最近になって、この海上施設をレーダ基地に使うのではないかとの懸念が政府関係者からも上がっている。
月刊誌「正論」10月号に元自衛艦隊司令官の香田洋二氏が「誰が中国の横暴を止めるのか」と題する記事を書いており、その中に「東シナ海のレーダーの脅威」という項目の中で、「もし、中国の海洋プラットホームにレーダーが設置された場合、これまで単なる宣言だけで実効性が低かった中国のADIZ(防空識別圏)が、実質的な機能を持つことになる。そして、それは平時から、日本側の動きを常に中国が把握できることを意味することから、わが国の安全保障に与える影響は計り知れない。」と書いている。
海上プラットホームは攻撃には弱いが、攻撃される可能性は極めて低い。
また、南シナ海南沙諸島の埋め立てについて、昨日米国のシンクタンクCSISから、ミスチーフ礁に3本目の滑走路が建設可能な埋め立て地が確認されたとの報道が流れた。(今年5月以降、専門家の間では「埋め立て(Reclamation)」ではなく、人工島造成(Construction of Artificial Island)」という言葉が使われるようになっており、国際法で認められない行為であるという。)
日本国にとって死活的なシーレーンであるこの地域が、中国によって軍事基地化される事について、私の知人の海運会社の社長が大変心配していた。
「正論」10月号では、先に紹介した香田洋二氏の他にも山田吉彦・東海大学教授も日本に対する影響を次のように書いている。
「この海域は『日本の生命線』とも言える重要なシーレーンである。日本人の生活に不可欠な石油の80%が通過するだけではない。日本とアジア諸国、さらに欧州、中東を結ぶ航路であり、日本人にとって必要不可欠な物資が通過している。しかも、タイ、ベトナム、マレーシア、シンガポールカンボジアブルネイ及びインドネシアの一部の港などと日本を結ぶ航路には、迂回路が存在していない。
この迂回路を持たない航路を通じ行われる貿易額は2014年で、輸出において約1000億ドル、輸入において約900億ドルにものぼる。これらの貿易の状況から考えても、南シナ海が紛争地域となり船舶の航行に障害が出た場合、『存立の危機』という事が当てはまるだろう。
また、日本の経済の中枢を築く自動車輸出において、年間200万台が南シナ海を通過している状況から鑑みても、日本はその安全に責任を持たなければならないのだ。」
これだけ具体的な輸出入の数字は初めて知った。
新しく合意された日米ガイドラインには次の記述がある。
「日米両国は、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域の平和、安全、安定および経済的な繁栄の基盤を提供するため、パートナーと協力しつつ、主導的役割を果たす。」
南シナ海にこれだけの危機がありながら、今回の安保関連法案の国会審議ではホルムズ海峡の機雷掃海だけが争点になっている。
中国は東シナ海の海底ガス田開発のリグも撤去しないし、南シナ海南沙諸島の岩礁埋め立てによる基地化も引き下がることはないであろう。
七十数年前にヒトラーはラインラント進駐、ズデーテンランド進駐を行い、こららのナチスドイツの行動を容認したヨーロッパ諸国、とりわけ当時の英国首相チェンバレンは、1938年9月ナチスドイツのズデーテンランド進駐を認めたミュンヘン会議を終えて帰って来たロンドン空港で大観衆に迎えられたとチャーチルの「第二次世界大戦」にも書いてある。
それが第二次世界大戦の引き金になった。
私にはこの当時のヒトラーの行動と、現在の中国・習近平の行動がタブって見える。