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「国のために死ねるか」読後感その2

《【 】の文は本書からの引用です。》

伊藤氏の死生観、人生観には父上の教えが大きな影響を受けていると思う。

その父上は 旧陸軍中野学校の出身、戦時中に受けた蒋介石台湾総統の暗殺命令を実行するために、戦後も射撃訓練を続けていたことが書いてある。

伊藤氏が日本体育大学を卒業し、突然海上自衛隊に入隊する際にすでに「軍務」に就くという認識を持っている。

入隊する日に、実家で父上と祖母とのやりとりの話があり、その後次のように書いてある。

【自分が今から向かう場所は、公務の場ではなく軍務の場なのだ。公務と軍務の決定的な違いは、危険度がどうこうではなく、死を伴う命令に対して拒否権があるのか、ないのかという話である。警察官、消防官に拒否権はあるが、自衛官にはない。

そのことを父も祖母もハッキリと認識していた。】

ただし、海上自衛隊横須賀教育隊に入隊してみると。

【同期になる者の中に、私が想像していた「国のためになら命を失ってもいい」と思っている者は1人もいなかった。取り返しのつかない誤りを犯したと焦った。】

昭和47年、私が大学2年生の夏に、日本学生同盟の仲間40名ほどで陸上自衛隊土浦武器隊に体験入隊させて頂いた。

当時は三島事件から2年後、「盾の会」の母体となった日本学生同盟の関係者の体験入隊は全く出来ない為、日本郷友連盟の集団に潜りこませてもらった。それが後にばれてNHKニュースで流れて郷友連盟の関係者の皆様には大変なご迷惑をかけることになったのだが。

その時に、自衛隊の食堂で、夕食後我々が軍歌を歌っていると、自衛官からシラーとした目で見られた強烈な記憶が残っている。

三島由紀夫さんと何度も長期体験入隊した経験を持つ先輩は、この雰囲気を承知していたが、私はショックを受けた。

当時の自衛隊は、2〜3年でいろいろな資格が取れますよという事で隊員募集をしていた。

隊員には「国を守る」という意識はないんだろうと思った。

ただし、今の自衛官は明らかに違う。

余談だが、この時の4泊5日の体験入隊は、郷友連盟の約200名の隊員の中で、我々日学同の40名の小隊だけが突出した動きを見せ、指導教官が「あなた方は新兵訓練の3ヶ月分を、わずか4日間でやり遂げたが、どこかの寮で合宿生活をしているのですか?」と不思議そうに聞いて来た。

伊藤氏は能登半島沖の不審船事件を契機として、海上自衛隊が特殊部隊を創る事になり、その創隊に関わる。

当初は米海軍特殊部隊シールズをモデルとしていたが、【最終的に、米海軍が秘密保全を理由に拒否して来た。】為に、日本独自の特殊部隊を創る事にした。結果的にそれがよかった。

【国家理念も、戦術思想も、国民性もまるで違う他国の部隊にそのまま使えるものがあるわけがない。】

私は、米陸軍のグリーンベレー、海軍のシールズ、そして米軍は公式には認めていないが、OBが盛んに情報を出し人気テレビドラマシリーズにもなったユニット(デルタ・フォース)など、米軍の特殊部隊が最も優れていると思っていたら、伊藤氏の見方は全く違っていた。

【私は以前、アメリカの特殊部隊なのだから、すごいものなのだろうと思っていた。映画の影響か、本か、噂か、なんの影響か分からないが、勝手に世界最強部隊のようなイメージを描いていた。

それが実際に米海軍特殊部隊を見たとき、手にしている武器をはじめ装備品は高価で最新のものであったが、個人の技量は我が目を疑うほどの低レベルだった。

その時は、私の中にあった最強イメージとのあまりのギャップに驚き、「能ある鷹は、爪を隠すものだ」と思おうとした。けれども、その後十回以上、いろいろな場所でいろいろな行動を共にしたが、私はついぞ彼らの爪を見ることができなかった。彼らは、爪の鋭い鷹というより、よく忘れ物をする気のいい兄ちゃんたちというイメージである。

たが、それが米軍なのだ。】

伊藤氏はここから、最強の米軍、最強の軍隊に対する分析をされるが、私にとってはまさに目からウロコの説明であった。

【米国の特殊部隊の技量は異常に低い。・・・そこに米軍最強の秘密がある。特殊部隊というのは少数精鋭であり、・・・隊員の個人の能力に託すところが大きい。だから、米軍は苦手なのである。

米軍の特徴は、兵員の業務を分割し、個人の負担は小さくして、それをシステマティックに動かすことで、強大な力を作り出す仕組みにある。それは、個人の能力に頼っていないので、交代要員をいくらでも量産できるシステムでもある。さらに、個人の負担が少ないので持久力がある。

これが、米軍が最強でありえる大きな理由だ。】

そして、戦争についても、

【日本という国は、何に関してもトップのレベルに特出したものがない。ところが、どういうわけか、ボトムのレベルが他国に比べると非常に高い。優秀な人が多いのではなく、優秀じゃない人が極端に少ないのだ。日本人はモラルが高いと言われるが、それは、モラルの高い人が多いのではなくて、モラルのない人が殆どいないということである。・・・あくまで一般的傾向としてだが、軍隊には、その国の底辺に近い者が多く集まってくるものなのだ。だから戦争というのは、オリンピックやワールドカップのようにその国のエース同士が勝負する戦いではない。その逆なのである。

サッカーのワールドカップで日本とアメリカが試合をするとしたら、日本でサッカーが最も上手な11名とアメリカでサッカーが最も上手な11名が祖国の代表として、国家の威信をかけて戦うことになる。しかし、これが戦争となると、日本で最も駄目な11名とアメリカで最も駄目な11名が祖国の代表として、国の威信をかけて戦うのに近い。

要するに戦争とは、その国の底辺と底辺が勝負をするものなのである。だから、軍隊にとってボトムのレベルの高さというのは、重要ポイントなのである。】

だから、人も物資も豊富に供給出来る国、アメリカが最強なのであろう。

大東亜戦争において、日本の下士官は世界最強との評価を得たが、今の自衛官も非常に高い評価を得ている。しかし、日本は「人も物資も豊富に供給出来る国」ではない。

「たまに撃つ  弾が無いのが  玉にきず」

これは自衛官が作った川柳で賞を貰った句である。

旧軍も自衛隊も悪しき伝統を引き継いでいるようだ。日本人の知恵でカバー仕切れるものではない。

そして最後に、北朝鮮に拉致された日本人の奪還についても書かれており、それはこの本を読んで頂きたいが、次の文章が私の胸に大きく響いた。

【どんなに美しい言葉で飾ったところで、軍事作戦とは、国家がその権力を発動し、国民たる自衛官に殺害を命じ、同時に殺害されることをも許容させる行為なのである。

ゆえに、権力発動の理由が「他国とのお付き合い」や「××大統領に言われたから」などと言うものであってはならない。たとえ同盟関係があろうとも、軍事作戦発動の根底にある目的は、日本の国家理念に基づくものでなければならない。】

全く同感である。

その為にも日米同盟を対等な立場の同盟にする必要があると思っているし、法整備も遅れているので早急に整備する必要があると考えている。