中国海軍空母戦闘群出動

24日、中国海軍の空母「遼寧」が、ミサイル駆逐艦など5隻からなる空母戦闘群を編成して第1列島線を越え南シナ海に入ったことが大きく報道され、27日(火)の産経新聞の主張欄には「傍観せず空母導入考えよ」と題し、「軍拡中国が侵略の誘惑にかられないようにするためにも、安倍晋三政権は、垂直離着陸戦闘機F35Bを搭載する空母の導入や、南西方面の航空基地の増加、航空隊の拡充を図る検討に急ぎ着手してほしい。」との記事が載っている。

海上自衛隊ではヘリ搭載護衛艦という名称だが、外見は空母と見える「伊勢」「日向」が就役している。

この護衛艦は全長197メートル、満載排水量1万9千トン、ヘリコプター最大11機を搭載できる。

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(写真提供は海上自衛隊)

排水量では戦前の日本海軍の正規空母「蒼龍」とほぼ同じ、艦名も戦前の航空戦艦の名前をつけており、普通に見ればヘリ空母である。

私は「伊勢」が就役後1年経った4年前、高知新港に入港した際に艦内見学と説明を受けた。

甲板下の格納庫、エレベーター設備など、米国の海軍基地で見た米国海軍の空母と同じ作りであった。そして、この艦はF-35B戦闘機を運用できるとの事であった。

また、昨年(平成27年)3月には同じ様な船型の護衛艦「出雲」が就役しており、2番艦は来年就役する。

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(写真提供は海上自衛隊)

こちらは全長248メートル、満載排水量2万7千トン、ミッドウェー海戦で最後まで奮戦して撃沈された日本海軍の正規空母「飛竜」より大きい。搭載ヘリは最大14機である。

これらの4隻をヘリ空母と呼べないのは、我が国が憲法9条の制約のもと、防衛計画大綱で専守防衛をとっているからである。

確かにこれらの艦にはソナーなど対潜水艦用兵器も装備しているが、私は必要なかったと思っている。

今朝のテレビニュースで安倍首相とオバマ大統領がハワイの真珠湾でアリゾナ記念館などを訪れるとのニュースを見た。

昭和16年12月の真珠湾攻撃総隊長であった、淵田美津雄元海軍大佐の自叙伝によれば、昭和の初期にも日本海軍で専守防衛が議論され、その時には空母不要論も出たそうである。

淵田氏はこれに反対し、同書でも「古来、専守防衛で戦に勝てたためしがない」と書かれている。

現在の日本は、攻撃は米国に依存する考え方である。

しかし、日本が攻撃されそうになった時、米国が即座に駆け付けてくれる保証は無い。

まずは日本が自国を守る行動をすべきであり、その為の戦力を保持すべきであろう。

ただし、産経新聞の主張の様に、その為に空母を持つ必要があるのかどうか。

現在、中国海軍の空母は1隻で、2隻目、3隻目も建造中であるとの事だ。

今の空母「遼寧」は、旧ソ連の廃艦を購入して改造したもので、練習用といわれている様に速度も遅く、艦載機のスホイ戦闘機が順調に離発艦出来ているかどうかも不明だ。

また、常時空母打撃群を警戒任務につける為には、最低3隻の空母がいる。

1隻は任務中、2隻目は訓練、3隻目は整備のためドック入りの必要があるからだ。

米国海軍の空母打撃群は空母の他に5〜6隻のイージス艦、攻撃型原子力潜水艦1隻、高速戦闘支援艦1隻で構成される。

米国海軍は10隻の10万トン級空母を保有しており、常時3〜4空母打撃群が警戒任務についている。

第7艦隊には横須賀を母港とする空母「ロナルド・レーガン」の空母打撃群が配属されている。

軍事評論家によると、これらの空母打撃群の年間維持費は2兆円近いと試算する説もある。

来年度の日本の防衛予算は5兆1千億円の予定であり、とてもじゃないが米国海軍並みの空母打撃群を運用する事は不可能だ。

また、空母は攻撃に弱い、その為にイージス艦の様なミサイル搭載護衛艦が護衛するのだが、現在の長射程の対艦巡航ミサイルの攻撃を空や地上から受けた場合に防ぎきれるかが疑問視されている。

それ以前に、現在の我が国の防衛計画は南西諸島防衛に重きを置いているが、確たる戦略論がないと指摘する防衛問題の専門家もいる。

私は、国会で戦略論を議論してほしいとの意見を聞いている。

その為には、自衛隊の高官を国会に呼んで参考意見を聞く必要があると考えているが、これまでそうした事はなかった。

米国では普通に行われているが、平和な日本ではその議論すらなかったのだろうか。

これからはその考え方を変える必要があると思う。