免震・制振ダンパーに関する不適正事案について

KYB(株)及びカヤバシステムマシナリー(株)が、国土交通大臣認定や顧客との契約の内容に適合しない免震・制振オイルダンパーを出荷した(部材の品質の問題)、という問題は、マスコミが報道した時から、マスコミの大騒ぎと、国土交通省の問題なしとの対応に大きな違和感を覚えていたので、ブログにはあえて書かなかった。

今日の午前中、自民党政調会・国土交通部会で国土交通省住宅局から、この問題の説明があったので出席し、説明を聞いてやっと全貌が分かった。

建物の地下等に設けられる免震層に免震ゴムなどの支承材とともに設置されるのが免震オイルダンパーで、これには大臣認定がいる。

また、建物の上部構造の柱と梁で構成される部分に設けられるのが制振オイルダンパーで、これは大臣認定は不要で、顧客との契約問題のみである。

建築物の耐震基準は建築基準法に定められており(昭和56年6月1日制定)、これによると、震度6強から7程度の地震に対して倒壊するおそれのない建物とする必要がある。

免震ダンパーの大臣認定の基準は、建築基準法の基準よりハイレベルのものが要求されており、今回問題になった、品質のバラツキが大臣認定の±15%以内、という基準からオーバーしても、耐震基準には問題ないというのが国土交通省住宅局の見解であった。

また、制振ダンパーについては顧客との契約違反の問題のみが残る。

そして、免震ダンパーについても、大臣認定等の内容に適合しない乖離値の製品について、検査データーを大臣認定等において許容されている値に書き換えて出荷していたという問題は残る。

対象製品は、H12.3からH30.9までに出荷されたものであり、987件の共同住宅、事務所、病院、庁舎等に設置(不明、調査中を含む)されている。

なお、今年起きた大阪府北部地震(震度6弱)で、該当するダンパーを設置したビルが14棟あったが、被害の情報は届いていないとの事だ。

また、社内の検査官不足など検査体制の不備が報道されているが、それに対する国土交通省の対応に問題はなかったのか質問したところ、

「大臣認定の申請書類に検査体制も書かれてあり、抜き打ち調査はするが、対象の会社が免震だけで八十数社あり、出来ていなかった。」との回答であった。

対象の会社がそんなにあった事実は初めて知った。

今後まだ、不適正な事案が出る可能性もある。

今回に限らず、日本の基準は高すぎる事があるようだ。

高い基準を設定すれば国民は安心するであろうが、今回のような事案が発覚すると、日本の会社に対する信頼性が損なわれ、こちらの損害の方が大きいと思う。