「主権なき平和国家」を読んで

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昨年の10月頃であったか、表題の本を探して読んだ。著者の伊勢崎賢治氏は「元国連PKOの幹部職員、2003年からは日本政府特別代表としてアフガニスタン武装解除を担った。」、布施祐仁氏はジャーナリストと書かれている。

日米地位協定の解説書だ。

この本の最初の方に「地位協定とは、ある主権国家の中に何らかの事情で異国の軍隊が駐留するという異常事態を制度化するものです。」と書かれている。

在日米軍の事故に対する日本政府の対応は、事故が起きる度に問題になる。

その度に、この国は真の独立国家ではない事を思い知らされる。

在日米軍の主な特権11項目について解説している。

「日本のどこにでも施設・区域の提供を求める権利(同協定第2条)、提供された施設・区域内で全ての管理権を行使する権利(第3条)、アメリカ側が優先的に刑事裁判権を行使する権利(第17条)」などである。

しかも、その解釈や運用の詳細については「日米合同委員会」で決められ、問題なのはこの合同委員会で協議された内容や合意された事項が、日米双方の合意がない限り非公表とされていることである。

また、日本国の領空7ヶ所に設定されている「低空飛行訓練ルート」についての検討、1978年に62億円でスタートした「思いやり予算」が 、15年間で30倍を超える2千億円に膨らんだ経緯について解説している。

さらに国連PKOについて、日本政府の国民に対する不確実な説明などについて書かれている。

そして、最後に改正私案も載せている。

今回で3回目の読み返しとなったが、読めば読むほど、「日本は本当に独立国家か?」という思いが強くなる。

私を含めて、外国の軍隊が日本に駐留する事に対する日本人の鈍感さ、これは異様なのだがそれについて気が付いていない異様さ。

明治維新で我が国が近代国家となってから昭和20年8月の敗戦まで、日本国は朝鮮半島、中国大陸、台湾へ何度か軍隊を進駐させて、地元民から強い反発と抵抗を受けた経験を持っている。

昭和20年8月以前の日本に外国軍隊が進駐したなら、我々も同じことをしたのではないかと思う。

しかし、戦後は武力を持って進駐軍を排除するほどの抵抗はなかった。

様々な理由があろうが、大きな理由は憲法9条の存在であると思う。

私は国会議員になって以来、この問題に取り組んでいるが、これまでの政権与党である自民党の政策決定の歴史があり、なかなか参議院外交防衛委員会で正面切って取り上げる事の難しさを感じている。

ただし、個別にはいくつか質問で取り上げたし、外務省と防衛省の職員に問題提起をしている。

平成15年(2003年)頃には、自民党有志で日米地位協定の改定を実現する議員連盟を作り、活動していた時期があり、昨年の臨時国会参議院外交防衛委員会における野党議員の質問の中で、河野外務大臣がその議連の幹事長であり、岩谷防衛大臣が副会長であったとの発言があった。

また昨年、2018年8月には全国知事会日米地位協定の抜本的な見直しについて日米両政府に提言したとの報道があった。

ソ連崩壊から二十数年経ち、ここ数年は中国の軍事的台頭が日本にとって脅威となっている。

米国のアジア政策にも変化が見られる現在、日米地位協定の見直しを検討する必要を感じている。