息子を殺した元事務次官

週刊文春6月20日号の「飯島勲の激辛インテリジェンス」欄で「盟友・熊沢英昭さんへ」と題する文章があると知らされて読んだ。

週刊文春は滅多に読まないが、飯島勲氏はテレビや雑誌などに出ていると、的確な政治状況分析をされるので、大変勉強になるのでその言動には注目している。

熊沢英昭さんは小泉純一郎内閣時代の農林水産省事務次官であった。

当時、BSEの問題で、輸入牛肉の安全・安心を巡る大混乱に対応したのが熊沢氏であった。この問題の責任を一身に背負ってもらうため、内閣として次官更迭の体裁をとった。しかし、行政手腕は高く評価していたので、その後駐チェコ大使に任命し、大活躍したと書かれている。

小泉総理の秘書官と農水省事務次官とで、BSE問題に一緒に取り組んだのであろう。

別のページでは息子を殺した事件が特集されている。

息子さんは、自らのツイッターで、子供の頃から母親の教育熱心さに憎しみをいだき、中2の時に母親を殴り倒した事や、自身が統合失調症だと綴っている、と書かれている。

週刊文春でも殺人の動機は「息子を殺さなければ、自分が殺されていたと思う」「5月に川崎市の路上で児童ら二十人が殺傷して犯人が自殺した事件がきっかけになった」などと書かれている。

農水省のトップや大使を務めた超エリートが、76歳になって44歳の息子を刺殺せざるを得ない状況に追い込まれた事に、子殺しを肯定するものではないが、同情の念を禁じ得ない。

それ以上に驚いたのは、この文の中で、飯島勲氏が、4人兄弟のうちの3人が知的障害者であると書かれている事であった、初めて知った。

その事に関してこう書かれている。

「口では同情すると言いながら、何にもしてくれない世間に対して、孤独を恨んだ事は2度や3度じゃないよ。兄弟3人抱きかかえて、いっそ無理心中しちゃおうかなんて思い詰めた日すらあったしね。」

飯島さんは自衛隊の観閲式の来賓待合室で2度見かけた事がある程度で、直接お会いした事はない。

最後にこう書かれていた。「熊沢さん、ワイドショーのコメンターみたいな論評はしないよ。犯した罪は償ってもらわなきゃならないね。でも、地獄を見たあなたと一緒にいつか、孤立した家族の支援活動に一肌脱ぎたいな。その日が来ることを信じてるぜ。」

この言葉は私の心に響いた。