中国の今

16日(日)午後9時からNHKスペシャル「中国激動 怒れる民をどう収めるか」が放映された。
場所は山東省の人口三百数十名の小さな農村、地方政府(県)がこの村の土地使用権を農民から取り上げ、民間の土地開発業者に売ったことによる地方政府と住民とのトラブルを、地方政府から依頼された、北京にある民間の”紛争仲裁人”が間に入って解決しようとする事件の顛末をルポした番組である。
中国各地の暴動は年間20万件という数字がテロップで流れた、中国が広いとはいえすごい数字だ。
地方政府が土地の権利を約30億円で土地開発業者に売渡し、その一部を住民に移転補償金?として支払ったが、これが微々たるお金で、村の近くに、国か地方政府が移転先として建てた住宅には家賃が高くて入居することもできず、近くの村に知り合いを頼って引っ越した元の農民は、生活をする手段も奪われて途方に暮れている。
土地を買った民間業者は、住民の反対運動で建物を建てることができない。
紛争仲裁人が地方政府と交渉する過程で役人が「我々は中央政府からノルマを嫁せられている、土地を売って開発する以外にそれを実現する方法はない。」と言う。
こうして中国各地に建てられたマンションなどの住宅ビルは、人の住まないゴーストタウンとなっているとの報道がある。
土地の売却代金は、その多くが役人の懐に入って裏金となっているのであろうことは容易に想像がつく。
お金が動くことでGDPに貢献する、しかし、入居する人を考えずに建った建物は数年後には廃墟となる。
私が中国に初めて行ってから十年以上が経つ、その当時から、かの地の中国人通訳が、上海に林立するマンション群は人が入居しておらず、投機目的でしかない、こんなことで数年後にはどうなるんだろうと心配していた。
現在、それが中国各地で起きているという事だ。
この紛争仲裁人は天安門事件の経験者、あの時の悲劇を繰り返さないという思いがある。
交渉の過程で登場してくる男性は十代半ばの娘が二人いて、一人でめんどうをみている。
妻はある日突然当局に拘束されて帰って来ない、おそらく自分が反対運動の中心にいるので拘束されたのだろうと言う。
反対運動のもう一人の中心人物の50代の女性は、北京へ行って中央政府へ直接訴えようとして北京へ着いた途端に地方政府に拘束されて行方不明になる。
数日後、この女性は隙をみて逃げ出し、知り合いの家に隠れていたのを仲裁人が見つけ、地方政府と交渉して移転補償問題を解決する。
これらの事件は中国らしいといえばいいのだろうか、人権無視の凄まじい国だ。
これをきっかけとして、住民三百数十人のうち、二百数十人が移転同意の判をおす。
その判はすべて拇印、日本人観光客の中国土産の定番は一個千円ほどの安い石のハンコだが、それを買うお金もないのだろう。
また、途中で開発業者が勝手に工事を始めるトラブルがあった。
この映像は日本人には衝撃的だ、ブロックを積み上げる工事が始まるが鉄筋が一本もない。住民の反対運動が始まると簡単に壊される。
中国の建物が地震で簡単に崩壊するわけだ。
事件解決のきっかけは、女性が中央政府に訴える行動であった。
番組では、中央政府は、住民の不満のはけ口が自分たちに向かうことを極端に恐れていると言う。
これが高まった時には中央政府はその怒りを国外に向ける、その時に中国漁民に扮装した軍人が尖閣諸島魚釣島に上陸する可能性は極めて高い。
十数年前、最初に中国を訪れて、北京の日本大使館で大使はじめ大使館員から中国の現状説明を受けた際、この国は年10%以上の成長率を維持しなければ崩壊するということであった。
その成長率も7%前後になった、習近平政権になってからどうも様子がおかしい、今年から来年にかけて中国が大きく揺れる可能性は高い。