オーストリア視察その4

現地時間午前4時過ぎ、オーストリア西北、ドイツとチェコの国境に近いリンツ市のホテルでこれを書いている。
その3の詳細を記す。
9月17日、初めに訪れたのがウィーン市内にあるオーストリア連邦森林管理株式会社、
午前9時から11時20分まで、ローランド・カウツ氏と昨日視察したバイオマス発電所、シマリンの副取締役でもあるマリオ・バヒースル氏から、オーストリア国有林管理について説明を受け、質疑応答を行った。
以下はローランド・カウツ氏の説明だ。

この会社は数年前に民営化されたが、国有林管理については100年の経験を持っている。
オーストリアの森林は3分の2が民有林、残る3分の1の86万ヘクタールを管理しているが、自由に伐採して使えるのは、そのうち35万ヘクタールである。
オーストリアでも木質バイオマスの利用が進んだために、製紙業との間で原木の取り合いとなって原木の供給が足りなくなった。日本も同じような課題を抱えていると聞いているが、我々はそれを克服したのでアドバイスができると思う。
と言っていたが、あまり特筆する程の話も無かった。

一つ驚いたのは原木を運搬するトラックの大きさである。40トントラックと言うからどのくらいの大きさかと質問したら、原木を積載した総重量だと言う。疑問に思ったが、映像を見て納得した。
日本のそれよりはるかにでっかいトラックが、トレーラーを連結して林道を走っていた。
オーストリアは林道を作る技術もレベルが高く、外国でも造っていると自慢していたが納得した。
また、オーストリアは40トントラックだがフィンランドは60トントラック、カナダは100トントラックを使っているとのことだ。日本は積載量4トンのトラックだ。
この大きさのトラックで運んで輸送運賃が立法メートル当り27ユーロ(現在3645円)だそうだ。
マリオ・バヒースル氏に対しては、発電所シマリンの質問が多かった。

昨日の説明では、木質バイオマス発電設備は、補助金が切れる2019年以後は赤字経営となるので存続が困難になると悲観的であったが、バヒースル氏は、発電は難しいが熱(湯)の供給で採算が取れると考えていると話していた。
私は、昨日聞いたが不確実であったガス火力発電所の発電出力について質問した。
3基ある発電所のうち最大のものは280メガワットの発電出力があり、これはオーストリア最大の発電出力を持っているそうだ。
この発電所第二次世界大戦の前からあり、当時はナチスドイツ領でイギリス空軍に何度か爆撃され、新しくバイオマス発電設備を造る時にも不発弾が出てきてイギリスに問い合わせたそうである。
また、この地域の原木は何が多いのかと聞いたら、モミの木とトウヒだという。トウヒが分からないので調べたら、エゾ松の変種で唐桧と書く、建築材、土木用材としてヒノキの代用と書いてあった。
これは、本日視察したCLT合板の材料でもあった。
記念写真を撮って11時30分にこの会社を出発、ギュッシング郡に向った。

ギュッシング郡は地域全体がバイオマス発電を何カ所も作って、電力と熱供給を自立させた所として有名だ。
午後2時07分現地着、ブルゲンランド州ギュッシング郡ストレム村の村長さんのベルンハード・ドイチェ氏がエネルギーセンターで待っていてくれた。


氏は1968年生まれの45歳、2007年に村長に就任した。
通称自然村の村長さんで、再生可能エネルギー・ヨーロッパセンター・ギュッシング有限会社のプロジェクトマネージャーである。
ここは現在世界各地から年間3万人の視察者が訪れ、日本からも非常に多い、昨日は東北大学の教授がきたし、明日も日本から視察団が訪れるそうだ。また、NHKはじめマスコミ各社も訪れたそうだ。
この地域は年の内344日は晴れるのに、今日は雨で残念だとジョークを飛ばしていた。
また、ベルンハード村長は、ことし2月16日に京都市で開催された京都環境文化学術フォーラム・スペシャルセッションに講師と招かれたそうで、その時のパンフレットを見せてくれた。
そのパンフレットの紹介欄では市長となっていたが、村長の間違いだそうである。
ギュッシング郡は現在2万6千人の人口がいるが、自然エネルギーに取り組んだ15年以上前はインフラ整備の遅れた貧しい地域で、電気や熱のエネルギーは他の地域から高い値段で供給され、また、働く場所も少なく人口減少が続いていたそうだ。
バイオマス発電に対する取組みは、1992年に17世帯に熱を供給する小型プラントを作ったのが最初であった。ところが、当時は灯油の値段が安く、プラントは不評であった。

その後、世界のグリーンツーリングの波に乗り、郡内18箇所にバイオマス発電を始め、あらゆる自然エネルギーを開発中で、現在取組中なのは木材を発酵させてガス化するバイオガスであり、その実験施設も視察した。
自然エネルギーに取り組む前は、郡内を訪れる宿泊者は年間1万8千人であったが、現在は自然エネルギー施設の視察に35万人が宿泊する。
そして、エネルギー関係の会社が次々に設立され、雇用の場が増えたことにより人口が増えているそうだ。
ギュッシング市の発電量は市の使用量の3倍あり、他の地域に売電している。
原木の供給については、ギュッシング市を例にとると、年間4万4千トンの原木を使用するが、毎年7.5トン/haの成長率があり、使用量の2倍の原木が増えているので心配ないそうだ。
1時間35分にわたり質疑応答を行い、現地視察を行った。

初めに行ったのは2001年にできたバイオガス施設

次に行ったのがストレム村の、牧草を発酵させて発電と熱供給をする施設だ。数百メートル先はハンガリーで、以前は国境警備の兵隊がいたそうだが、今はのんびりとした村だ。私の背景はハンガリーだ。

この村は以前は畜産業が盛んであったが、共産圏の崩壊後、東欧から安い肉が入ってきて畜産業が潰滅したそうだ。
牧草地が残っているので育った牧草を利用して、この施設でバイオマス発電と熱供給に使っており、年間4,250メガワットパーアワーの電力と、熱を供給する。
具体的には400世帯の電気と暖房をまかなっているが、その3倍、1200世帯をまかなう能力を発揮しており、村で使った残りは他地域へ売っているそうだ。
泊まったホテル周辺の景色と夕食時


written by iHatenaSync