メチャクチャ面白い自衛隊の小説

友人が、この本は大変な評価でおもしろいからと言って数日前に貸してくれた。
昨夜、数時間で一挙に完読した。作者は月村了衛、全く知らなかった。
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舞台はアフリカ東部のジブチソマリア、海賊対処法で派遣された陸上自衛隊第一空挺団の12名の小隊が、墜落した米軍ヘリ救出に向かい、夜間、地元の武装勢力に襲撃されるところから始まる。
武装勢力にテロリスト集団も加わり自衛隊員が簡単に殺され続ける。武装勢力イスラム国」が欧米人を何名か公開処刑しその様子をインタネット上に動画で流した事を彷彿とさせる。
自衛隊員の反撃も、それはないだろうと思う位のスーパーマンもどきの活躍ぶりで、武装勢力を殺しまくり数人が生き延びる。
最後は政府発表は事故ということで処理される。という筋書きである。
憲法下では、国内では自衛隊は軍隊と認められていない。でも、海外に行けば軍隊である。
しかし、自衛隊が普通の軍隊と違うのはその行動基準である。
普通の軍隊の行動基準は「何をしてはいけないか」だけが規定され、軍独自の判断で動ける最良の余地が大きいネガティブリストである。
一方自衛隊自衛隊法によって「やってよい事」だけが小出しに規定され、規制が厳しく自主裁量の余地が極めて小さいポジティブリストが適用されている。
海外派遣されても自衛隊員の反撃基準は警察官職務執行法の第7条である。
何度も書くが、この法律は拳銃を所持している警察官が、拳銃を適法に所持出来ない日本において、犯人を取り押さえるに際して武器の使用はくれぐれも慎重に行えという趣旨の条文である。
武装勢力以外にも、誰でも武器が入手できる中東などで通用する法律ではない。
平成15年(2003年)に成立したイラク特措法の審議の最中であった。
衆議院の特別委員会の委員長は高村正彦先生、与党筆頭理事は中谷元衆議院議員高知市で中谷先生と話す機会があり、中谷先生に対して「私は、現憲法下で自衛隊を海外に出すべきではないと思います。もし、自衛隊員が事故などで命を落とす自体が起きたらどうするんですか。普通の公務員が海外出張するのと訳が違うでしょう。現憲法下では軍人としての処遇が出来ないでしょう。」と強く訴えた事を思い出した。その思いは通じなかった。
自衛隊が海外で国際貢献のために派遣されてから十数年が経つ、幸い戦闘でも事故でも、自衛隊員が海外で命を落とす自体は起きていない。
それ自体が幸運以外の何物でもないと私は思っている。
今でも、私は現憲法下で自衛隊を海外に派遣することには反対である。