外国人労働者の高知県内の実態調査

地元へ帰り、十数年前からベトナム人を受け入れている、高知県土佐市の(株)土佐電子へ行き坂本重法専務に話を聞いた。

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(株)土佐電子は電子部品や電子基盤の加工、組立などをする会社であるが、平成15年(2003年)にベトナムへ電子部品の組み立て工場を作った。

それ以来、ベトナム人社員を高知で研修させたり、日本人社員がベトナムへ行って指導したりと交流を深めて来た。

私も数年前に高知県議団有志でホーチミン市の同社工場を訪れて見学し、女子社員達が明るく働いている姿を見て、上手くいっているということを実感した。

当時、辻社長にどうしてベトナムを選んだのですかと質問したら、第一にベトナム人浪花節がわかる、つまり日本人と同じ感性を持っている。

第二にベトナム人女性は手先が器用で電子部品の組立に向いている。

第三に識字率が85%と東南アジアではダントツに高い、

第四に親日的な国だ、

第五に労働者に占める若者の比率が高い、などと明確な答えてくれた。

その後、ベトナムとの交流が非常に上手く進んでおり、今年11月18日にはホーチミン市の工場に新築した社屋の一部に日本語教育の学校を作り、学費も無料で、宿舎も無料という事だ。

30名の5教室で、150名を6ヶ月間教育して日本に送り出す計画だそうだ。

私が、これは、これまでベトナムの人達にお世話になった恩返しという趣旨ですか、と質問すると坂本専務は「そうです」と答えた。

素晴らしい経営理念だと敬服した。

また、この日坂本専務から渡された名刺には「土佐ふれあい協同組合・理事長」と書いてあった。

この組合はなんですかと尋ねたら、外国人労働者高知県内に送り出す組合です、とのこと。

平成18年に設立され、当時は技能実習生ではなくて、研修生の時代であり、初めは中国人が多かったが、現在ではベトナム人が中心であるとの事、この組合では約1ヶ月の研修の後、年平均100人以上を世話しており、設立以来千人以上の外国人が高知県で働いているとの事であった。

また、坂本専務は外国人労働者が時給の高い都会へ流れる対策について、高知県内は時給は安くても、地域の人達がタダで野菜などの食料をくれたりする事と、物価が安いので、長い目で見れば、手取りは都会で働くのと変わらないという事もアピールしていると話された。

私も実感しているので大事な視点だと思った。

外国人労働者が上手く定着している秘訣は何ですかと尋ねると、第一に日本人労働者を雇うのと同じ接し方をしてほしいとお願いしている事、

第二にwi-fi環境を整える事、これによって外国人労働者が安い値段で母国の家族・友人と頻繁に電話で話す事が出来、日本にいても孤独感が無くなる。

第三に社保、国保に加入する事、これは農家などでは日本人でも加入していない場合があるので、日本人以上に経費がかかる。など今入管法を改正して、政省令を改正しようとしている動きを先に実現している。

また、日本人は残業を嫌がるが、ベトナム人は突然の残業でも時間給が上がることと余計に働ける事とで、喜んで応じてくれるという。

この話を聞いて、私は日本人の労働に関する考え方が違って来たのを痛感した。

我々の頃は「モーレツ社員」という言葉が生きていた。今の若者は働く時間よりも、自分の時間を優先する。

その後、高知新聞外国人労働者の問題を特集していたので、その記事の担当記者として掲載されていた小笠原記者に連絡して話を聞きたいとお願いしたら、もう一人の新妻記者と二人で応じてくれた。

彼らも土佐電子の坂本専務の事は良く知っていた。

高知県内では外国人実習生の大きなトラブルはないそうだ。しかし、現在外国人労働者を受け入れている人達の中には、時給の高い都会へ流れる心配はしているとの事であった。

高知県内では約2500の外国人労働者が働いており、そのうち約1400名が外国人技能実習生、農業関係が圧倒的に多く、私自身も、もっと増やしてほしいとの要望を受けている。

前にも書いたが、農業関係者から、高知県の農業は外国人労働者無くして成り立たない、との話を聞かされた。

これが高知に限らず、地方の現状である。

先にも書いたが、彼らを雇用する事は、場合によっては日本人を雇用するより高くつく。

しかし、日本人労働者が集まらない現状では彼らに頼るしかない。