2020年版外交青書

先ほど次のようなニュースが流れました。【茂木敏充外相は19日の持ち回り閣議で、2020年版外交青書を報告した。

青書は、ロシアとの交渉が停滞する北方領土について「わが国が主権を有する島々」と明記した。19年版では「北方四島は日本に帰属する」との記述を削除していた。】

 

私は昨年5月9日の参議院外交防衛委員会の質疑において、北方領土交渉において安倍総理が、ロシアのプーチン大統領に配慮しすぎることに関して、以下のように苦言を呈した。

【中西質問】

「先月、2019年版の外交青書が発表されたが、その中で2018年版には「北方四島は日本に帰属するというのが日本の立場である」という記述があったが、それが削除された。その理由について河野外務大臣に聞く。」

【河野外務大臣答弁】

「政府の法的立場に関して申し上げれば、何ら変わったことはございません。その上で申し上げれば、この外交青書というものは当該年度における我が国の外交活動を総合的に勘案をしているわけでございまして、あらゆる活動について、あらゆる内容について記載をしているわけではございません。いずれに致しましても、政府としては、領土問題を解決し、平和条約を締結するという基本方針の下、引き続き粘り強く取り組んでまいりたいと思います。」

【中西質問】

外務大臣、今までもこの委員会でもそういう趣旨の発言をされましたし、衆参の本会議でも安倍総理も同様な趣旨の答弁を行っております。一方で、安倍総理も菅官房長官も、四島の帰属問題を解決して平和条約交渉を進めると、平和条約を締結するという基本方針に変わりはないということを繰り返し発言されておられます。今回の外交青書の記述変更も、私は一連のロシアとの北方領土返還交渉におけるロシアに対する配慮であろうと思っております。

 

一方で、ロシア国内における、プーチン大統領、ラブロフ外相の発言は日本政府の思惑とは全く違っておりまして、日本に対する強硬な発言が続いております。

日本政府のロシアに対する思いやりが効を奏しているとは思えません、

これまで我が国が「北方四島は日本固有の領土だ」と主張してきたことから後退したと受け止められかねないと危惧するものであります。

私は、北方領土の問題は、主権の侵害に対して日本がどう対応するかの問題だと考えております。

1956年の日ソ共同宣言。これは平和条約締結後に歯舞群島色丹島を日本に引き渡すというものでした。

私は平和条約というのが、戦後処理が最終的に終わったということを意味する以上、平和条約締結後に残り93%の島の継続協議というのは事実上有り得ない話だと考えております。

プーチン大統領も2012年に、日本や欧州のおもだったメディアの代表と会合を行い、そこでは、56年宣言には2島を引き渡した後、主権がどちらの国のものになるかについては書いていない、とか歯舞・色丹、それ以外は一切問題外であるとかそういう発言をしております。 

そして1993年細川首相の時代の東京宣言は、4島の帰属問題を解決して平和条約を締結するというものでした。ただ、これは、必ずしも4島の返還という意味ではなく、帰属先は一切述べられておりません。

私はこれが日本の対露外交の基本方針だと思っております。東京宣言によって初めて、4島の帰属問題が決定していないということ、つまり北方領土問題とは4島の問題だということをロシア側も認めたことが重要であります。

そして、小渕首相の時代の、1998年の日露間でのモスクワ宣言、この時に国境確定委員会というものを作っております。つまり、国境はまだ決まっていないということをロシア側も認めておりました。

ところが、プーチン大統領は2005年9月、平和条約問題に関連して、「第二次大戦の結果、南クリル(北方4島)はロシア領となった。国際的な諸文書、国際法でも認められている」と初めて語りました。

それまでは4島の帰属問題は決まっていないという事をプーチン自身が認めていたので、これは明らかに歴史の修正だと思います。

昨年2018年11月の首脳会談の合意には、日ソ共同宣言を基礎にして交渉を加速するという形で東京宣言を抜いてしまいました。

それまでは2001年のイルクーツク声明でも、2003年の日露行動計画でも、プーチンがサインしたものには、基本的な合意として平和条約交渉のための東京宣言を掲げていたのに、それを外したという事は、日本政府の譲歩と受け取られたのではないかと危惧します。 

最近ラブロフ外相は、「第二次大戦の結果を認めることが、これからのあらゆる交渉の前提である」という言い方をしきりにしております。第二次大戦の結果、4島がロシア領になったという前提は、ロシアもプーチン大統領自身も以前は認めておりませんでした。4島はいまだ未解決の問題だと認めていたわけですから、その前提そのものが間違っております。

河野外務大臣は、本年2月、ドイツのミュンヘンにおけるロシアのラブロフ外相との会談後の記者会見で、「平和条約交渉は70年かけてやってきている、一朝一夕に解決することはないが、二人三脚でゴールにたどり着けるようにしたい」と発言したと報道されております。(読売新聞2019/2/18)

私は、北方領土返還交渉は、香港の返還交渉のように、長い期間をかけて慎重に交渉を続けることを要望いたします、答弁は求めません。