自民党国防部会・安全保障調査会から政府へ防衛費の大幅増額を提言決定

5月24日(月)12時から、自民党本部で国防部会・安全保障調査会の合同会議が開かれ、骨太の方針が決定される前に、合同会議より防衛費の大幅増額を提言することが決まり提言案が了承されました。
骨太の方針決定前に、国防部会・安全保障調査会から提言を出すのは初めてのことだそうです。

本年4月の日米共同声明において、「日本は同盟及び地域の安全保障をいっそう強化するために自らの防衛力を強化することを決意した。」と明記されたことを受けて、防衛費の大幅増額を提言します。

最近、岸防衛大臣も加藤官房長官も、防衛費はGDP比1%にはこだわらないと発言しました。政府はかねてからそう発言しておりますがなかなか増えません。

主要国における国防費の対GDP比 (購買力平価換算:2019年度)は米国3.05%、英国1.71%、フランス1.83%、ドイツ1.25%、韓国2.43%、豪州1.93%です。なお、NATOは2020年度の推計値で英仏の国防支出が対GDP比 2%を超えている旨公表しました。
これに対してわが国は0.9%です。
議員からの提案として、対GDP比の目標をもっと高く明記すべきだとの意見もありましたが、この点については異論もあり、部会長、調査会長に一任されました。
この提言については、かねてより私が外交防衛委員会や国防部会で提言してきたことが含まれているので2点について記します。第一に

(1)防衛関係費の抜本的な増額、の中で「事態発生から終結までわが国を守り抜くために必要な、十分な量の弾薬の整備や装備品の維持整備に係る費用の確保」が明記されました。

我が国の自衛隊はこの点が脆弱だと言われてきていたので、何度か私も提言してきました。最近は少し増額されておりますが、まだ十分ではありません。
第二に研究開発費の大幅な増額です。

我が国の国防研究開発費は、今年度1290億円と大幅に増えたとはいえ少ない。

米国の約11兆円は別格としても、EU各国の研究開発総計は約8,900億円、しかもNATOは別の共同研究費もあります。また、韓国の2019年度の国防研究開発費は4053億円であり、日本は韓国の3分の1以下です。
「今後、次期戦闘機開発や、本年度から開発を開始したスタンド・オフ・ミサイルについて、特に、12式地対艦誘導弾能力向上型について、艦艇発射型及び航空機発射型の開発によるファミリー化を推進するとともに、わが国防衛に必要となる弾数を早急に確保する必要がある。」

この問題も、私は3年前に参議院外交防衛委員会の質疑で取り上げ、増額すべきだと提言しました。

第三に、防衛産業基盤の強化です。

わが国の防衛産業は「発注量がそもそも少量であることに加え、『不安定な調達』『企業の実態をそのまま反映していない原価算定』等の要因により防衛部門の利益率の実態は、通常企業に求められる利益率と乖離し低水準にとどまっている。そのため、企業においては、防衛部門を維持することが益々困難となってきており、主要企業を含め撤退が相次ぎ、撤退に至る企業が今後さらに増加する懸念がある。

このような現状を打破するためには、企業が防衛部門を通じて、少なくとも企業が資金を調達するためのコスト(資本コスト)を上回り、十分な利益を実際に生み出すことができる仕組みを構築する必要がある。」
この点についても、私は防衛産業を訪問して実情を調査し、それを参議院外交防衛委員会で質しました。深刻な問題です。
今回の提言を受けて、今後、政府で骨太の方針が議論されます。