5月18日(木)午後4時から衆議院第一議員会館の大会議室で「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の第23回勉強会が、若田部昌澄・前日銀副総裁(現早稲田大学政治経済学術院教授)を講師に迎えて開催されたので出席しました。
若田部先生は、私が高知県議時代に、リーマンショック後に英国、米国、中国が金融緩和をして、経済回復をしていく中で、日本だけが金融緩和をしないで、経済が落ち込む中で、エール大学名誉教授の浜田宏一先生と共に金融緩和を主張されていたので納得し、かつ注目した。
その後、4年前に日銀副総裁就任するにあたって、参議院の議院運営委員会での質疑に、私が当時自民党古賀理事のご配慮で若田部副総裁候補に対して質疑をする機会を与えられた。
それ以来で、この日の講演は金融政策かと思っていたが、「日本の経済戦略:政策先進国への道」と題して財政政策にもしっかりと言及された。
この模様は1週間ほど後に、YouTubeの「超人大陸」で公開予定なので是非ご覧下さい。
とりあえず、配布された資料に基づき、先生のお話を簡単にお知らせします。【 】中が資料からの抜粋です。
まず、【「責任ある積極財政」とは何か」から始まり、「1.マクロ政策についての世界標準の見方を踏まえる
・現状はまだ「長期停滞」】
である。これは財務省の主導する、プライマリーバランスの2025年黒字化目標に対する批判である。
【2.「課題先進国」というより政策後進国
・本来は課題解決先進国、政策先進国であるべき
・また、アベノミクスはよく出来たプログラム、改善は可能だが、否定は不可能
3.望ましい経済政策はアベノミクスの進化、深化
・財政、金融、成長政策(、分配政策)の連携を深める】
また、【日本の人口減少の負の影響は過大評価されている】として以下の他国の合計特殊出生率をあげている、【日本 1.3 中国 1.2 韓国 0.8 香港 0.8 シンガポール 1.1 台湾 1.2 】
次に、デフレに苦しむ日本だが、
【経済成長政策は、
・一般的には難しいが、日本はキャッチアップの余地が大いにあり】として、最近の経済学にキャッチアップする方法として、
マクロ経済学の世界的権威であるオリヴィエ・ブランシャール(マサチューセッツ工科大学(MIT)教授、IMFのチーフエコノミスト)の著者「21世紀の財政政策」を紹介し、
【重要なのは債務の持続可能性、財務削減ではない】として、財務残高にこだわる財務省の考え方を批判している。
さらに、【日本の場合、・債務対GDP比率が446%まで金利>成長率にならない】
《追記》
次に【財政政策をめぐる誤解】は重要なので全文を掲載する。
【1.政府を家計に例えると・・・→政府は家計ではない。あえて言えば企業
2.赤字、債務の削減が必要→必要なのは債務の持続可能性、削減ではない
3.国債は将来世代の負担→とは限らない。(予想)実質金利による。金利が低ければ、民間投資は阻害されず負担ではない。むしろ、金利が低い時に国債を発行せずにするべき投資をしないのは、将来世代への負担になる
4.財政再建を経済成長に頼るのは無責任→経済成長なくして財政再建なし
5.将来の有事(戦争、自然災害)への備えとして財政黒字が必要→必要なのはレジリエントな経済であり、事前の投資が必要】
さらに、【金融政策をめぐる誤解】では
【1.日銀の低金利政策は不必要→(反論、以下同じく)中立金利が下がる中では、低金利政策は必然
2.日銀は、1998年以来、金融緩和を続けてききた→明確な金融緩和は2013年以降
3.金融緩和に効果はなかった→成長、雇用、物価、税収に効果はあった
4.日銀がマネーを増やしてもインフレにならなかったのだから、デフレは貨幣的現象ではない→日銀がマネーを増やしたから、デフレではない状態まで来たのだから、デフレは貨幣的現象
5.金融緩和政策のせいで、ゾンビ企業が増えた→ゾンビ企業は増えていない
6.金融緩和政策のせいで、財政規律は弛緩した→金融緩和政策のおかげで、税収は増え、政府債務対GDP比率は安定化
7.日銀が債務超過に陥ると大変だ→中央銀行に債務超過問題はない
8.金融緩和の「副作用」が大変だ→低金利の原因は民間需要の構造的低迷、デフレ脱却無くして、低金利からの脱却なし】
特に7.は、中央銀行には通貨発行権があるので当たり前の事だが、財務省があえて流しているのではないかと思う。
【金融政策に効果はあった、就業率は増え、実質時給・実質雇用者報酬は増えた】
私の予想以上に若田部先生の講演は素晴らしかったです。
次の機会にもう一度お願いしたいと思ってます。
また、講演終了後、来年の政府の骨太方針に対する議連の提言案を記者会見で発表し、私も同席しました。