福島原発事故7月7日

今朝の新聞に定期点検を終えた九州電力玄海原子力発電所の再稼働の条件として、政府が突然「ストレステスト」なるものを持ち出してきて佐賀県の古川知事が再稼働の判断を延期したとの記事が出ている。
関連して、7月10日に再稼働が予定されていた愛媛県伊方原発も再開が先送りになるという。
福島第1原発の状態がどうなっているのかいまだに不明である。
1号機から3号機まで炉心溶融が起きているのであれば前代未聞の事故である。
私が会ったある政府高官が「一か所に原発を6基も作るのは問題だ。一か所を修理しようとしても別の原発の事故の影響が出て修理が進まない」と言っていた。
福島第1原発の事故が、いつ全貌が判明するのかすらわからない。
そんな時に相当売れていると本屋が宣伝していた、小出裕章氏の「原発のウソ」(扶桑社)を読んだ。
小出氏については、一昨年だったと思うが、原子力発電についてインターネット上で調べていたら、原発反対の立場で活動している京都大学助教がいてそれが小出氏であった。
京都大学は原子物理学についての研究者の多い大学であり、ノーベル物理学賞をもらった湯川博士以来研究者のレベルは日本一高いと認識していたので小出助教が目に留まった。
しかし、当時は原発反対論者にそれほど注目していたわけではなかったので、インターネット上で紹介されていた小出氏のいくつかの講演録を読んだ程度であった。
この本は6月1日の出版であり、その第一章に福島原発の現状を書いている。
その小題と、その中の気になる文章を拾ってみると、≪奇妙な『楽観ムード』が広がっている≫、ここでは「安心できる材料はまだ何一つありません。放射性物質は漏出し続けているし、これまで累積した汚染もきわめて深刻です。福島県飯館村では、チェルノブイリ事故で強制移住となった地域をはるかにしのぐ汚染が確認されました。」と書かれている。
≪原子炉は本当に冷却できているのか?≫の中では、「原子炉は今もきわめて危機的な状態にあります。それどころか、このままだとチェルノブイリを超える大事故に発展する可能性さえ十分に残しています。そう考えざるをえない理由は、毎日大量の水を注入しているにもかかわらず、原子炉が正常に冷却できていないからです。」と書かれている。
また、≪再臨界は起きたのか?≫の中に次のような気になる記述があった。
東京電力が3月25日に公表したデータを見る限り、1号機の原子炉で核分裂連鎖反応が起こっている、つまり『再臨界』が起こっているとしか考えられなくなったのです。・・・・私がそう推測したのは、東京電力が『クロル38』という放射線核種を検出したからです。クロル38は自然界にある塩素が中性子を受けることで生成されるものですが、中性子は主に原子炉で核分裂反応が起こっている時に発生します。クロル38は半減期が37分と短いので、核分裂反応が止まれば検出されることはまずありません。ところが3月末になってもまだクロル38が検出されている。もしそうだとすると原子炉が止まってからも継続的に生成されていることになるわけで、どこからか中性子が出ていることになります。検出量から見て、それは再臨界としか考えられませんでした。
そうこうしているうちに、4月20日になって東京電力は『クロル38の検出は間違いでした』と発表しました。・・・・現段階では東京電力の言うことを信じる以外にないのですが、もしクロル38が検出されていないとすれば再臨界の可能性は小さいということなので、少しホッとしています。」相当気になる記述である。
長くなるので以下には小題だけ記す。≪「崩壊熱」による燃料棒の損傷≫、≪炉心は核燃料が溶けるほどの高温になっていた≫、≪今後起こりうる最悪のシナリオ≫、≪チェルノブイリに続く、新たな「地球被爆」の危険性≫、≪悪化する作業員の被爆環境≫、≪水棺方式に疑問あり≫、≪レベル7とはどういう事故なのか≫などである。
私はこの本に書かれていることをどの程度信じていいのか判断がつかないが、原発反対派からの代表的な考え方ではないかと思って読んだ。
福島原発事故以来、それまで原発推進派であった方が、反対派に変わった人がいる。
評論家の西尾幹二氏が書かれた「平和主義ではない『脱原発』」(月刊誌Will8月号)は大変勉強になった。
また、中部大学の武田邦彦教授が同誌で書かれた「石炭火力発電まで後退すべし」も参考になる。四国電力香川県坂出市の火力発電所を再開する準備をしているようであるが、この火力発電所がどの程度の発電能力を持っているのかデータがない。
武田教授も脱原発の立場になったようだ。
福島原発がどういう状態なのか解らない中で、福島県民のみならず多くの国民が不安を感じている現状で、現在ある原発の再稼働の問題、また、稼働中の原発を止めるのかどうかの問題を抱えている。
私は、福島第一原発の今後の状況によって変化はあるが、現状では全ての原発を直ちに止めることによって産業界に与える影響、そして、国民生活に与える影響を考えると、そこまで踏み切ることはできないと考えている。