日高義樹講演会を聞いて

米国のハドソン研究所主席研究員である日高義樹氏の講演会が東京であると聞いて駆けつけた。
日高氏は日米安保関係を知るうえで最も多くの情報を持っている方であろう、ブッシュ元大統領は友人だと話していたが米国の政府、軍関係者に非常に多くの知人を持つ日本人であろうと思う。
主催は西村眞悟衆議院議員が主催する東京西村塾、こんな塾があったことを初めて知った。
演題は「日米安保と日本の軍事力」、講演は今の米国でどこに行っても国民の話題となるのが、「ブッシュ減税」と呼ばれるブッシュ元大統領が9年前に作った減税法が本年12月末に期限を迎えることである。(正確にいうと2001年と2003年に制定され本年末まで延長されている)という話から始まった。
オバマ大統領は減税を継続しないで元に戻すと言っており、そうなると大幅な増税となり、米国国民が投資している株の配当も3割下がり消費が減ることによって不況となると話していた。
また、次期大統領選はロムニー候補が勝つのではないかと予想していた。ハドソン研究所はロムニー支持者が多く、日高氏も何度か食事を一緒にしたと言っていたが、ハドソン研究所内ではオバマ批判が目立っているが、支持率は拮抗しており行方はわからないと話していた。
日米同盟で興味を持った話がいくつかあるので以下に紹介します。
米軍の戦術が大きく変わっている最中なのでそれを前提として今後の日米安保を考えるべきだと話されていた。
初めにハーバード大学ジョセフ・ナイ教授の中国のミサイル技術の分析の話で、中国のミサイルの命中率は飛躍的に上がっており、(弾道ミサイルや巡航ミサイル空母が攻撃されるので)第7艦隊がこれまでどおり軍事行動できるかどうか危うくなった。
ミサイル攻撃に弱い空母打撃群は将来不要となるであろう、今後の海軍の主力は潜水艦になるであろう。
とりわけ、中国が衛星撃墜に成功したことは軍関係者にとって大きな衝撃を与えた。
米軍は通信衛星を使った通信網によって行動しており、米国の通信衛星が撃墜された場合に軍事行動に大きな障害がでる。
さらに、中国のミサイル技術の進歩に伴い、在日米軍基地は攻撃対象となりミサイル攻撃で無力化されるために、将来在日米軍基地は必要でなくなる。
米軍は、今後地上戦闘をしないつもりでおり、今後は無人兵器の戦いになる。
そこで必要とされるのはグローバルホーク、B2ステルス爆撃機オハイオ級潜水艦である。

石原伸晃自民党幹事長と数人の自民党国会議員が米国を訪れて講演し、そこに同席した。(インターネットで調べたところ昨年12月に小野寺五典今津寛衆議院議員と共に訪米し、ハドソン研究所で講演したことが今津議員のホームページで紹介されている)
石原氏は、日本は今後も核武装はしないが集団自衛権は認めると発言した。
石原氏はその発言は聴衆に受けると思っていたらしいが全く受けなかった。
その理由は、米軍は今後地上戦闘をしない方向で動いている、そんな時に集団自衛権で地上戦を共同して戦うという話をしても受ける訳がない。
また、尖閣諸島問題に関しては日本と中国が戦闘になるような事態になっても米軍は動かないであろう。
米国政府の中枢には、野田内閣から尖閣諸島が日本固有の領土であるという主張が届いていないので、米国の政府高官は尖閣諸島が歴史的に日本の固有の領土であるということを知らない。
中国の温家宝からは大統領に手紙が届き、その内容は、尖閣諸島は明の時代に中国が発見したのだから中国領だというものである。
数か月前、米国で石原都知事尖閣諸島を東京都が買い取るという発表をした時に同席したが、ある記者から「石原都知事尖閣諸島を中国から買うのか」との質問がでた。
石原都知事が気付かなかったので石原知事には伝えなかったが、アメリカ人記者の認識はその程度である。
そして、私が驚いたのは野田総理が米国政府に全く信頼されていないという話が何度か出たことだ。
鳩山、菅元総理の時よりかはいくらかましだろうかと思っていたが、全く違うようだ。