藤原正彦「国家と教養」を読んで

年末に藤原正彦氏の「国家と教養」を読んだ。

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藤原正彦氏の書いた「国家の品格」は素晴らしい本だ。この本も期待通りの本であった。

この本の最期の方に、お茶の水女子大学に在職中に読書ゼミをやったとの記述があり、その中で取り上げた「新版 きけ わだつみのこえ」、山川菊英著「武家の女性」、宮本常一著「忘れられた日本人」が紹介されていたので通販で取り寄せた。

きけ わだつみのこえ」は最初に読んだのが、高校生の時であったかと思う、それから何度か読み返した。大東亜戦争などで戦死された学徒兵の遺書をまとめた本である。

二十歳過ぎの若者が、なんでこんな崇高な文章を書けるのだろうか、教育の違いを痛感させられる。

読むのに気が重い。

最初に届いたのが「忘れられた日本人」

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作者の宮本常一氏は民俗学者昭和10年代から30年代にかけて、主に西日本の集落を歩いて地元の人たちから聞き取り調査した話が書かれている。

その中で感銘を受けたのが、「村の寄合」についての記述。

記録に残っている江戸時代から戦後まで、村では物事を決めるのに、何日もかけて「寄合」を開き、皆が納得するまで議論を続けたという。

昔の仕事は力仕事、それを終えてから何日も議論するのは大変な労力であったと思う。

しかし、これがあったからこそ村の団結が守られてきたのであろう。

私が県会議員になった頃に、この話をしてくれた人がおり、「これが日本流の民主主義で、昔からあった。」と教えられた。

国会議員になってわかった。

国会では議案の上程日程から、委員会審議の方法、本会議での可決まで、与野党国会対策委員長同士、委員会の筆頭理事同士で話し合って決める。

両者が合意するまで何度でも話し合う。

地方議会では、日程や審議方法等は議会事務局と知事部局の職員同士が話し合って概ね決め、議会運営委員会にはかって決める。

私のように市議、県議と地方議会を経験している者から見ると、国会のやり方はまどろっこしい、先の見通しがなかなか出来ない。

しかし、この方法こそ「村の寄合」における日本流の民主主義だと気付いた。

それでも、時には話し合いがまとまらず、与党と一部の野党の賛成で議事を進める事がある。

そうすると批判が起きる。時には衆参の議長からも苦言が呈される。

私は参議院外交防衛委員会(21名)の理事(5名おり、自民党3名、公明党1名、国民民主党1名)をさせて頂いているが、常に丁寧な対応が求められている。

これから「武家の女性」を読む。