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習近平の訪米

昨日(27日)の産経新聞には、訪米中の習近平が、東・南シナ海情勢などアジア太平洋の地域安保や人権問題で譲歩を迫るオバマ大統領に対し、「核心的利益」に触れる部分では一切の妥協を拒む姿勢を崩さなかった。
「25日の共同記者会見では、米国のほか近隣諸国が懸念を強めるスプラトリーの人工島建設について、『自国の領土主権と合法、正当な海洋権益がある」と述べた上で、『軍事化を図る意図はない』と主張して批判を一蹴した。」との記事が載っている。
同じ新聞に「国際軍事専門誌IHSジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーは25日、中国が南沙諸島のファイアリークロス礁に造成した人工島に3,125mの滑走路が完成したとの分析結果を明らかにした。
中国は複数の人工島に計3本の3,000メートル級滑走路を建設しているが、今月20日に撮影された衛星写真を分析したところファイアリークロス礁の滑走路が完成したことが判明したとしている。」との記事も載っており、オバマ大統領の発言はそれを前提としたものだ。
ファイアリークロス礁は1988年に中国海軍が、当時ここを占有していたベトナム軍に攻撃を仕掛けて軍事奪還した環礁だ。赤瓜礁海戦と呼ばれる。
この後、オバマ大統領が「アメリカは世界の警察官ではない」と発言した2013年9月以降急速に埋め立てや人工島造成が進められた。
南シナ海での中国による幾つかの環礁埋め立てについては今年5月以降、専門家の間では「埋め立て(Reclamation)」ではなく、人工島造成(Construction of Artificial Island)」という言葉が使われるようになっており、国際法で認められない行為であるという。
今後、米国は中国の主張する人工島が領土であるとの前提のもと、12海里(約22キロ)の領海、領空に艦艇、航空機を派遣するのかどうか。
派遣すれば軍事的に緊張感が一挙に高まるのか、それとも中国が傍観するか。
南シナ海にはベトナム、フィリピン、マレーシア、台湾なども実効支配している環礁があるし、中国が埋め立てないし人工島造成を行っている環礁について領有権の主張をしているものもある。
この海域は日本にとって、東南アジア、インド、中近東、ヨーロッパとの海上交通の要の海域だ。ここで紛争が起きれば日本の貿易に甚大な影響が出る。
米国はじめ周辺諸国の軍事的抑止力が中国に対して機能するかどうかの問題だ。
1936年再軍備を完了したナチスドイツは、フランスとの国境地帯で非武装化されていたラインラントに軍事侵攻した。
ヒトラーは強気だったが、ドイツ軍最高司令部はフランスの軍事反攻を受け、ドイツは負けると反対した。しかし、フランスは動かなかった。
当時の軍事力はフランスが圧倒的に強く、ヒトラーも内心はびくついていたとの事だ。
これに味をしめたヒトラーは、今度はドイツの東部国境チェコスロバキアのズデーテンランドに軍事侵攻した。この時もフランス、イギリスから軍事反攻を受けるとの大きな懸念があり、ヒトラー以外の軍幹部は大反対したそうだが、またも仏、英両国は動かなかった。
これによりナチスドイツではヒトラーに逆らう官僚はいなくなり、ポーランド侵攻に始まる第2次世界大戦の口火が切られた。
ラインラント侵攻、ズデーテンランド侵攻の際に、フランスとイギリスがヒトラーにきっちりと反対の行動を示していれば第2次世界大戦は避けられたとチャーチル元英国首相は回想している。
今回のオバマ大統領の態度は、習近平並びに中国人民解放軍幹部に誤ったメッセージを送っていると危惧している。