台湾の半導体メーカーTSMCの熊本工場を視察

4月23日(火)宿毛の友人達と熊本市を訪れた。

目的は熊本県菊陽町に建設された、台湾の世界的半導体メーカーTSMCの日本法人JASMの工場建設の経緯と、それに伴う経済効果等を調べる為である。

前日の21日(月)宿毛市を午前6時30分に車で出発した。メンバーは元宿毛商工会議所会頭で(株)田村商事会長の田村章さん、建設資材販売店の(有)山中スレート瓦工業所の山中正洋社長、私の大学の後輩である林壮吉さんの4名。

私と田村さん、山中さんは、TSMC熊本県へ進出を決めた経緯を知りたいという目的で、林さんは熊本市に住んでいる中央大学少林寺拳法部の同期生である丸本さんを訪ねる為である。

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写真右が田村さん、左が山中さん
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上の写真はJASM第1工場前での撮影、工場内は警備が厳しく、中に入るのが難しいと聞いたので手続きをしなかった。

Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社、略称JASMは、世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリ)である台湾積体電路製造(TSMC)が過半数を出資する子会社で、ソニーセミコンダクタソリューションズが20%未満、デンソーが10%超の少数株主として参画している企業である。

22/28nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)プロセスならびに12/16nm FinFETプロセス技術による製造を担う。

第1工場は今年2月に落成式を行い、2024年末までには稼働開始予定で、隣接地に第2工場の建設を決めたが、2024年(令和6年)2月6日 - 親会社のTSMCより、トヨタ自動車が資本金2%相当の出資をすると発表。これにより、持ち株比率は、TSMC約86.5%、ソニーセミコンダクターソリューション約6.0%、デンソー約5.5%、トヨタ自動車約2.0%となった。

今回の訪問にあたっては、私の中央大学少林寺拳法部の後輩(私が4年生の時の1年生)である丸本文紀さんにお願いした。

丸本さんは、35年前に注文住宅建設会社の(株)シアーズホームを1人で立ち上げ、現在では資本金1億円、シアーズホームグループ15社で従業員数650名、年間売上高300億円に達する一流企業となった。

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(上の写真は会社概要から)

大した人物です。彼がいるおかげで、熊本市を訪問するのも7回目となった。

また、彼の熊本県済々黌高校の野球部の後輩であり、シアーズホームの社員でもあった南部隼平県会議員(2期、自民党)にも22日夜、丸本さん主催の食事会で工場建設の経緯について話をお聞きし、23日の熊本県企業立地課に話を聞く手配をしていただいた。

23日(火)午前10時から熊本県商工労働部産業振興局企業立地課半導体立地支援室の吉仲室長からTSMC工場の進出について詳しく話を聞いた。

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吉仲室長の説明によるとTSMC社の熊本工場設立の話は、経済産業省が日本各地を調査して、電気料金が安くて水が豊富にあり、広い土地がある場所ということで熊本県へ打診があったという。

九州は、九州電力が2つの原発と多くの火力発電所を持ち、電気料金が他地域より安く、また熊本県阿蘇地域は伏流水が豊富にあり、土地もある、さらにソニーが工場進出をしているということで熊本県に決まったそうである。

経済産業省が動くにあたっては、自民党甘利明衆議院議員が会長を務める「半導体戦略推進議員連盟」の動きがあったようだ。

私も参議院議員の時にこの議員連盟に加盟して何回か勉強会に出席しており、今回の視察にあたり、昨年10月に行われた議連勉強会の資料を衆議院議員から頂いて勉強し、さらにクリス・ミラー氏の「半導体戦争」(昨年2月出版)、平井宏治氏の「新半導体戦争」(2024年3月出版)を読んで勉強した。

その結果、パソコン、携帯電話、軍事兵器、自動車、電化製品など、ありとあらゆる製品に半導体が使われており、石油に代わる戦略物質となり、まさに「半導体を制するものが世界を制する」状態で、米国、台湾、日本、韓国などの西側諸国と、半導体を自らの手で製造出来ない中国、ロシアとの戦いになっている。

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(熊本県庁玄関で記念撮影)

JASM第2工場の建設予定は2024年末まで、稼働開始が2027年末の予定である。

第1工場との合計で、設備投資額約200億米ドル(約2兆9,600億円、1米ドル148円換算)、雇用予定者数3,400人以上、月間生産能力は12インチウェーハー換算で100,000枚以上、生産品目は、(回路線幅)22/28 nm、12/16 nm、6/7nmの予定だそうである。

また、JASM工場建設が決まった後、新たに設備投資や工場新設が決まった会社は49社があったそうである。

国はJASM第1工場建設に対して最大で4,760億円の助成を予定していたが、第2工場へは7,320億円の助成をよていしている。。

すでにJASM第1工場落成以前から、この工業団地にはホンダやソニー、東京エレクトンなどの工場が進出稼働しており、JASM第1工場が加わった為に、通勤時間帯は周辺道路が大渋滞を起こしており、県では片側3車線の道路を早急に整備する計画だそうです。

また、従業員の確保が追いつかず、JASMの給料等の待遇が良い為に既存の企業から転職して、他企業に影響を与えていたが、県外からの就職希望が多く来てその穴埋めは出来ているそうです。

この県外からの転入人員、JASM工場の増員、その家族を含めれば凄い経済効果である。

また、台湾人社員の家族の外国籍子女を含めて、小学校から高校までの教育機会の確保、さらには、高専、大学などの増員なども大変だと聞いた。

台湾との航空便も、昨年から、チャイナエアライン(中華航空)が週5便、スターラックス(星宇航空)が週7便に増えて大盛況だと聞いた。

日本では、北海道千歳に、日本企業の「ラピダス」が工場建設を決めており、この工場では米国のIBMとの技術提携で世界最先端の2nmの半導体の製造を目指している。

また、広島県三重県など他県でも半導体関連企業の拡張の動きがある。

半導体関連の補助金は、令和3年度と令和4年度の補正予算で約2.1兆円を出しており、先週、積極財政議連の勉強会に出席した際に国会議員に聞いた話では、半導体関連に補助金を出し過ぎだ、との声が上がっているとの事である。

おそらく財務省が裏で動いているらしい。

しかし、日本の補助金額は米国や中国に比べて少ない。

先に述べたように、半導体関連企業の工場稼働による経済効果(固定資産税、法人税収入を含む)で、数年後には補助金を上回る収入が見込まれる。

是非、半導体製造復活の為に財政出動すべきだと思う。