藤田幸生・元海上幕僚長のオーラル・ヒストリー

先日、高知県出身で元海上自衛隊海上幕僚長の藤田幸生さんから、非売品ではあるが防衛研究所が発行したオーラルヒストリーが送られてきました。

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藤田さんは昭和17年11月に現在の香美市大栃町で生まれ、高知高校卒業(私の9期先輩です)後、防衛大学校を卒業し、海上自衛隊に入隊され、海上幕僚長で退官されました。

私は平成23年高知県議会議長の時、就役1年後の護衛艦「いせ」が高知新港に入港した時に初めてお会いし、それから現在まで、防衛についてのアドバイスをいただいております。

今回の本は非売品ですので、なんとか出版して、防衛省関係者のみならず、多くの国民の皆様に読んでいただきたいと願っております。

本の中で、私が皆さんに是非これだけはご紹介したいという部分だけ、まず掲載します。

それは海上自衛隊と米海軍との関係の話です。

【質問】(1998年8月31日の北朝鮮による)テポドン発射事案が海上自衛隊に与えた影響と言うのは何かございましたでしょうか。

【藤田】

イージス艦のオペレーションについて、海上自衛隊が米海軍に引けを取らないということを海上自衛隊も米海軍も認識したということですよ。これは大きかったですね。イージス艦だけでなくて、魚雷もそうだしヘリコプターもそうだし、LCAC(ホバークラフト型の上陸用艇)もそうですよね。米海軍と同じ装備を日本に与えたら、日本はそれを十分に消化して米海軍以上の能力を発揮するということが米海軍はわかった。・・・

海上自衛隊は米海軍とネイビー・トゥ・ネイビー・トークスで話をして、「これがいる。入れてくれ」「じゃあ、出すよ」と言ってくれた時には、徹底的に教育をして、訓練をして、中身を勉強して、その運用に関しては同じものだったら米軍には負けない。・・・

 それを、ハワイのRIMPAC(環太平洋合同演習)で示しているんですよ。それが、米海軍が海上自衛隊を見るときに一目置く理由ですよ。彼らは新しい装備を持っているから能力は高いよ。しかし、同じものを持たせたら海上自衛隊の方が能力が高くなるというのを、彼らはわかってる。だから大事にしてくれるんだから。だから、RIMPACという訓練の場が我々にとっては戦場と同じですよ。太平洋岸の国だけでなくて、関係各国全部あそこへ出てくるからね。」

その前段で次のように話されております。

「『ネイビー・トゥ・ネイビー・トークス(NNTALKS)』というのがあるんですよ。海軍同士の指揮官の話。ネイビーからネイビーへ、間には一切内局も政府も入れない。ネイビー・トゥ・ネイビー・トークスというのがあって、日本でもやるしハワイでもやるし、アメリカでもやるんです。課長、部長、幕長、ネイビー・トゥ・ネイビー・トークスということで。そういう場所で相手の本音を聞くんですよ。海上自衛隊と米海軍の間にはそういう場があるんです。そういう場で直接、相手からその話を聴く。」

またこの本の別の箇所では、藤田さんから「米海軍と海上自衛隊は相互補完関係であって、一体化している」という話もあります。

私は上記の米海軍との合同演習の話を護衛艦「いせ」艦上の昼飯会で、藤田さんからお聞きし、「中西さん、政治家はこの事を念頭において政治をしてください。」と言われました。

私も感動して、たびたびこの話をするのですが、国民の皆様には大変好評です。