現状が全く認識出来ていない日経新聞記者

今日の(15日)日本経済新聞の「大機小機」に、「財政拡大がそぐ経済の活力」と題する記事が出た。

岸田総理の所信表明演説の中で「危機に対する必要な財政支出は躊躇なく」行うと述べたことに対する批判で、「財政制度等審議会は建議でケインズのアニマルスピリットを引き合いに、過度な財政支出は民間企業の活力をそぐとの見解を表明している。」と書いてある。

財務省に教わったのであろうが、平成7年から地方議員を20年経験した私から見ると、全く見当はずれだ。

地方においてはバブルが弾けたといわれる平成2年以後も、山一証券北海道拓殖銀行などが潰れた平成9年(1997年)までは結構好景気が続いていた。

しかし、それ以後の緊縮財政によって民間企業が投資をすることを全く控えたままの状態が続いている。

私は平成11年4月に高知県議会議員になったが、その当時高知県公共工事予算はピークを迎え、それから10年かけて半減した。

その当時も国は時々補正予算で公共事業費を増やした事があった。

しかし、地方公共団体や民間企業にとって補正予算は当年限りで、5年程度の中期を見通した時に、地方公共団体は中期の事業を計画できないし、民間企業は事業の拡大には踏み切れない。

また、財務省はこの補正予算も、景気が上向きかけた途端にすぐに削減した。

その繰り返しだから景気は改善しなかった。これが平成不況の実態だ。

我々自民党が政権復帰した第2次安倍政権以後、自民党高知県連幹事長であった私は、何度も県内の建設業界をはじめ経営者の皆様に、従業員の給料を上げ、先行投資や設備投資をしてくれるようにお願いした。

しかし彼らの回答は「この国の財政投資がいつまで続くんですか」と、非常に懐疑的な答えがいつも返ってきた。

国の財政政策が全く信用されていないのだ。

その為、多くの建設会社の社員は臨時雇用のまま低賃金で、設備投資も控えたままだ。

先日も地元の高知で50代の経営者から、「30年間も給料が上がらない日本はおかしいでしょう。」と言われた、その通りだ。

私はバブルと言われた昭和63年までの数年間、東京でビル管理会社に勤めていた。

地上げといわれた現場、都内中心部の不動産価格の急激な上昇も現場で見た。

また、証券市場の異常な高騰も知り合いの証券会社社員を通じて見た。

それらは異常な世界であった。こんな状態が続くはずはないと思った。

私の勤めていた会社は、大手スーパーゼネコンの系列会社でバブル業界とは関係はなかったが、本社も私の勤めていた会社も労働組合はなかったが、基本給が毎年7%程度上がっていた。

これは経済成長を考えれば普通の状態だろう。

30年間給料が上がらないデフレが異常なのだ。

また、記事は「ケインズ政策の財政拡大が経済成長をもたらさないことから、不況でないときの財政拡大は経済のバブル状況をもたらすという帰結が出てくる。現在、多くの企業が過去最高益を記録し不況とはいえない。とすると現下の財政拡大はバブル状況をもたらす。」

全く違う。企業が過去最高益を出したというが、それは従業員の給料を上げない、設備投資を控えたことによる最高益ではないのか。

企業の多くが本当に利益をあげて、社員の給料をあげるなど富の再配分をしたならば、適度に物価が上がり、デフレから脱却する筈だ。

この新聞社は財務省の言う通りの記事を書くが、バブルを心配する前にデフレから脱却する事が先でしょう。

最近海外出張の多い会社の方から困った話を聞いた。

アメリカ出張に行った時にニューヨークやワシントンで泊まるホテルの宿泊代金は、現在では平均約3万円だそうだ。ところが日本の会社では、海外出張の規定で最高1泊1万8千円となっている。

この差額をどう扱うかについて悩んでいる。

また、私は友人がアメリカに住んでいて、40年前から現在まで11回アメリカを訪れた。

最初の20年間は確実に米国の方が物価が安かったが、今は米国の方が高い。

日本以外の先進国は普通に毎年物価が上がっている。

我が国は第2次安倍政権からインフレ率2%を目標にしているが、未だに実現していないではないか。

PB黒字化目標を掲げて、中途半端な財政出動を繰り返す愚策から一刻も早く脱却するべきだと思う。