高知型集落営農事業の現場を見る

宿毛市山北地区、篠川をはさんで対岸が愛媛県愛南町正木地区で、県境の典型的な中山間集落である。
この地域の米は宿毛市では評判が良い、篠山から流れてくる水が良い上に一日の気温差が大きいことが影響しているそうだ。
この地域で米作り農家の有志が「篠南集落営農組合」を作り、県の集落営農事業補助金を得て農業機械の購入等をやっている。「こうち型集落営農モデル」の一つである。
この事業は県が、農業の担い手の高齢化、就業者の減少、耕作放棄地の増加などの対策のために打ち出した政策である。
私は以前から農家がそれぞれに、トラクター、稲刈り機、乾燥機などを購入し、その費用負担が大変だという話を聞き、なぜ何軒かが共同購入しないのかと何人にも質問したが、稲刈り時期が同じだからそれができないとの答えを聞いた。
私は農業を経験したことがないので、その理由に納得がいかなかった。
この事業はそれを打破する政策であり、「篠南集落営農組合」の営農計画にも「1集落1農場」、「土地は作物生産の場」という言葉が並ぶ。
数日前、この組合の設立時の副組合長であった田中実さんから私に電話があり、平成21年度から、集落営農事業補助金をいただいて機械の購入などをやっているが、23年度事業の一部で乾燥機を購入する計画があるが、当初計画と違って大型機1台でなく、中型機2台に変更してもらえないかとの話であった。
県の幡多農業振興センターと地域農業推進課から話を聞き対応したが、田中さんから今回は営農計画の変更が間に合わないので当初の予定通りに戻すとの連絡が6日にあった。
田中さんから話を聞く中で、県の担当課が山北地区の実情を把握していないことに気が付いた。例えば、ここでは宿毛市の平地と違って日当たりが悪いため、稲刈りが午後からしかできないそうである。また、大型機械が入らない小さな田が多いが耕作放棄地はない。
これらが分かったので昨日8日現場を見に行って田中さんの話を聞いた。
地区全体が稲刈りの真最中であり、他の人達の話を聞く機会がなかったが、以前からご支援いただいている谷口和昭さん、山本明白さんとお会いできた、お二人とも83歳だがいたって元気であり稲刈りに行く途中であった。
お二人とも息子さんが宿毛市内でサラリーマンをやっているので休日に稲作を手伝ってくれているという。
山本明白さんのご長男は外務省勤務で先日までカメルーン大使を務め、今回の異動で査察担当大使になったと高知新聞に大きく記事が載っていた山本啓司氏である。
この集落営農事業に参加するきっかけとなったのは、これまで各自が機械を揃えていたが高齢化が進み費用負担が大変になってきた、そこでこの事業を使って共同作業を進めようというものであった。
今は12人で構成されている組合だが、将来は地区の農家24人全員に入ってもらう予定だという。
農業機械が故障したら個人で買い替えはしないで、この組合に入ってもらって共同作業をすることを進めていくという。
山北地区はお米の品質がよいので作り甲斐がある、また、小さな田圃をまとめることも進めたいとも話してくれた。
私がそれについては県の補助事業があったとのではと言うと、田中さんはあると聞いている、自分が農協を退職した十年前は(田中氏は「JAはた」の宿毛市農協の支所長を務めていた)馬力もあったので自費でやったと話してくれた。
中西さんついでに柚子の木を見てくれといわれて、田中さんが耕作放棄地を整備して柚子を植えた場所に行った。

現地の写真
三年かけて農地の整備をやり、柚子を植えて五年目の今年、初収穫という時に鹿にやられた。

写真で見えるように柚子の木の皮が食べられていた。五年生のほとんどの木がやられ、木は表皮と幹の間から水分を補給するので枯れるだろうという。
もらった柚子は香りが高くて美味しかった。
この地区はシカ、イノシシ、サルの被害が多く、シカが化繊の網を食い破ったり、二メートルほどの囲い網を簡単に飛び越えるという、今後は鳥獣対策の補助金を使って金網で囲う予定だという。
そういえば、今年の2月くらいであった、この地区を一軒一軒挨拶回りしていた時に数十匹のサルが人家のすぐそばの田圃で何かを食べていた。
人に物怖じしないずうずうしいサルであった。
宿毛市も鳥獣被害が多い、猟をする人の減少で対策が遅れている。