台湾総統選で頼清徳氏が勝利

13日投開票の台湾総統選挙で、頼清徳氏が558万6019票(得票率40.05%)を獲得して勝利した。

中国国民党の侯友宜氏は467万1021票(33.49%)で大きく差がついた。また、民衆党の柯文哲氏は26.46%であった。

選挙前の予想では頼氏と候氏とは接戦になるのではないかとの見方が多かったので、予想外に差がついたと思う。

頼清徳氏の勝利を心からお祝い申し上げます。
私は、2019年、前回の総統選に頼氏が出馬した際、日本を訪れた時に、さる人の紹介でホテルで数人で会い、台湾を取り巻く国際情勢について話した事があった。

その際に、私の話に頼氏が共感したとの事で、数ヶ月後に頼氏から事務所へ電話をもらったが、海外出張中で話をする事が出来なかった。

今回の頼氏の勝利は、習近平にとっては我慢のならない事であり、習近平が悔しがっている姿が目に浮かぶ。

中国が台湾を併合しようとする最大の目的は、台湾にある世界最大の半導体受託製造企業であるTSMC社を取り込む事であったろう。

その構想も夢に終わった。

今後、台湾と中国の関係はさらに緊張するであろう。

中国軍の台湾侵攻を心配する見方もある。

米国のシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)」が一昨年行った、中国軍による台湾侵攻の23回のシミュレーションによると、多くのケースで、中国ロケット軍による台湾攻撃から始まり、その後台湾上陸を図るものであった。

しかし、昨年8月末から中国の李尚福国防相が突然消えた。

その後「中国の全人代全国人民代表大会の常務委員会は10月24日、2か月近く動静が途絶えていた李尚福国防相の解任を決めました。」との発表があった。

おそらく汚職であろうと推測されている。

しかも、ミサイル攻撃をかける中国ロケット軍は、昨年7月にトップの司令官李玉超上将と政治委員の徐忠波上将が汚職で失脚、その後任に指名されたのは、ミサイル部隊の経験がない中国海軍の王厚斌上将と政治委員は空軍の徐西盛上将である。

また、当時のロケット軍副司令官は自殺したとの報道があった。

このロケット軍幹部の汚職は、現在も摘発が続いており、最近では、ミサイルの燃料の代わりに水が注入されたとの報道もあり、とても戦える状況ではないだろう。

また、中国軍の上陸戦力は、075型強襲揚陸艦3隻と、071型ドック型輸送揚陸艦8隻の11隻があるが、合わせて11隻の揚陸艦で、一度に揚陸できる兵員は約1万人である。

これに対して、守る台湾軍は直接上陸部隊に対処する軍隊が約10万人配備できるようだ。

第二次世界大戦の経験から、上陸部隊の兵力は守備部隊の約3倍の兵力が必要とされている。

中国軍には一度に台湾上陸に使える兵力は必要数の30分の1しかない。

さらに、上陸を成功させるには航空優勢を確保する必要があるが、米台日が協力すれば、中国軍は航空優勢を取る事は難しいであろう。

しかし、軍事侵攻は難しくても、情報戦による台湾の親中国政策への転換は可能である。

今回は失敗したが、新たな情報戦を仕掛けてくるだろう。

それが可能かどうか、何よりも、中国国内の経済状況である。

不動産不況は、恒大集団(負債総額およそ48兆円)や碧桂園(負債総額およそ27兆円)といった巨大な不動産デベロッパーが経営危機に陥り、危機的な状況にある。

さらに最近では「北京市第一中級人民法院(中等裁判所)は1月5日に、中国のシャドーバンキング(影の銀行)の象徴で不動産開発会社の資金源の役割をしてきた資産運用会社の中植企業集団の破産申請の受理を決定した」との報道があり、国内市場に不安感が広がっている。

台湾侵攻どころではないようだ。