相変わらず、財政不安をあおる日経新聞と財務省

【「国の借金」1286兆円、23年12月末時点 過去最大

財務省は9日、国債と借入金、政府短期証券を合計したいわゆる「国の借金」が2023年12月末時点で1286兆4520億円だったと発表した。同9月末から10兆8404億円増え、過去最大となった。

税収で返済する必要のある普通国債の発行残高は1043兆7786億円と16兆3657億円増えた。普通国債を含めた国債は1146兆589億円、一時的な資金不足のため発行する政府短期証券は92兆2993億円、借入金が48兆939億円だった。】

これが2月10日(土)の日本経済新聞の記事だ。ヤフーニュースで電子販を見つけた。

私は日本経済新聞をとってないので、気付いたのは、昨夜(2月12日)西田昌司参議院議員YouTube西田昌司ビデオレター」で知った。

西田昌司議員は何度も財務省の方針に反対する情報発信をしているが、昨日のYouTubeのアドレスは、

https://youtu.be/pQzLAhHjdsc?si=1Df5qmipd8CYj-pm

です。

また、西田昌司議員は参議院の委員会でも、財務省、日銀に対して質疑を行っており、後で紹介します。

そもそも、「税収で返済する必要のある普通国債の発行残高は1043兆7786億円と16兆3657億円増えた。」という記事が特に国民の不安を煽る。

国債の元本を税金も使って支払っているのは、先進国で日本だけだ。しかも、国債償還にあたり「60年償還ルール」を定めているのは、先進国の中で日本だけだ。

他の先進国では、利払い費のみである。

後は、国債の期限が来たら「借換債」を発行している。

つまり、国債の支払いを新しい国債発行で賄っている。

日本も税収だけで国債の元本支払いをしているのではなく、「借換債」によっても期限の来た国債を継続させている。

日本では。一般会計から毎年度、国債の発行残高の(約60分の1に相当する)1.6%を償還費として「国債整理基金特別会計」に繰り入れることが法律で定められている。2023年度(令和5年度)予算案の国債費は約25兆3千億円だが、うち元本の返済に充てる債務償還費は(国債残高約1千兆円の1.6%にあたる)16兆4千億円余りとなっている。

この16兆円余を、防衛費や教育費、福祉費に当てればデフレ不況脱却に大きく貢献するであろう。

さらに、財務省は、財政赤字が大きいと財政の信任が問題になるという事で、財政赤字を減らしたがっているのだが、そうであれば、財政に対する信任を傷つけないよう、国際標準に合わせて、歳出から国債償還費を除けば良い。

私が顧問を務める「責任ある積極財政を推進する議員連盟」では、昨年、政府に対してこの「60年償還ルール」の見直しを提案したが、実現していない。

国債の償還期間が60年になっているのは、当初、このルールが建設国債に適用されていたため、道路・橋梁等社会インフラの平均耐用年数から決められた。

建設国債のみでなく、特例国債(赤字国債)にまで「60年償還ルール」を適用するのはおかしい。

また、日本政府の歳入には社会保険料が含まれていない。

国際標準では、歳入に社会保険料を含む。社会保険料は、社会保障給付費を賄うために国民が負う負担とされているわけだから、税収と同様に、歳入に含める方が適切だろう。

下の円グラフは財務省のホームページにある日本国債保有者の割合だ。

上の円グラフは令和3年(2021年)12月末、下の円グラフは令和5年(2023年)9月末の数字だ。民間金融機関の保有割合が減り、日本銀行保有割合が増えている。

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注目していただきたいのは令和3年は下段左側の「国債保有者別内訳」、令和5年は左端の「国債」のグラフです。

「銀行等」の保有割合が減り、「日銀」の保有割合が増えている。

日銀の保有割合が増えると何か問題があるのか、ありません。それは以下の西田昌司議員の委員会質問の一部を読んでいただれば分かります。

西田昌司議員は令和4年(2022年)3月15日の参議院財政金融委員会で以下の質疑を行った。

「日銀の国債引き受けは、現状では何の問題もない。(無制限に日銀引き受けを認めているのではない)

【日銀清水誠一企画部長答弁】

(一般論で言えば)民間銀行が日銀当座預金等を潤沢に保有している場合は、国債購入は日銀当座預金が原資となる。またそれがない場合には短期金融市場等から一旦借り入れて国債を購入する。

現在は日銀の当座預金が潤沢に用意されており、民間金融機関が短期金融市場からお金を借りる必要は無い。

(民間銀行が日本国債を買うのは、預金者から民間銀行に預けられたお金を使うのではない。日銀が民間銀行に用意した日銀準備預金で買う)

また、令和4年(2022年)4月11日参院決算委員会では、3月15日の質問を確認しながら以下の質問を行った。

日本銀行保有する国債の利息は、日銀の必要経費を除き全額国庫に納入する仕組みになっている。」

財務省答弁】

平成28年度は日銀が受け取る国債利息、収入は1.2兆円、これに対して国庫納付金額は0.5兆円、平成30年度は、利息収入が1.3兆円、国庫納付金額は0.6兆円、直近の令和2年度は、利息収入は1.1兆円、国庫納付金額は1.15兆円となっています。」

デフレ下で低利率でも、日銀の利息収入は約半分が国庫へ納付されており、令和2年度はほぼ全額が国庫へ納付されている。

また、マスコミ報道によると「2023年3月末の日銀の国債保有残高は581兆7206億円と前年度末から55兆5469億円増加し、過去最大を更新、国債の利息収入が1兆3319億円と前年から2086億円増えた。」と報道された。

さらに、日銀の令和4年度決算書によると、

「長期国債が、資産買入れを進めるなか、576兆2,197億円と前年度末を64兆9,885億円上回った。

  剰余金の処分については、日本銀行法第53条第1項に基づき、法定準備金を1,043億円(当期剰余金の5%)積み立てたほか、同条第4項に基づき、財務大臣の認可を受け、配当金(500万円、払込出資金額の年5%の割合)を支払うこととし、この結果、残余の1兆9,831億円を国庫に納付することとした。」

参考までに、同じく令和2年度決算書では、

「この結果、残余の1兆1,581億円を国庫に納付することとした。」とある。

また、グラフにある、国庫短期証券財務省の説明は「政府短期証券(FB)は、国庫の資金不足の際に、一時的につなぎ資金を調達するために発行されるものです。また、割引短期国債(TB)は、他の年限の国債と同様に、歳出需要を賄うために発行されるものです。発行の効率化のため平成21年2月から、この政府短期証券割引短期国債を『国庫短期証券(T-Bill)』という名称で、一体的に金融市場で発行しています。」とあり、外国人の投資割合が多い。

財務省は、私の知っている過去二十数年間、政府債務残高が増えると日本は財政破綻を起こすと言い続け、私も県会議員であった当初はそれを信じた。

2003年吉川洋・東大名誉教授は、複数の経済学者と共同で、政府部門の債務の対国内総生産(GDP)比率が140%に達していることを踏まえ、「財政は既に危機的状況にあり、できるだけ早い機会に財政の健全化が必要である」と言う緊急提言を発表した。

これを知った当時の私も、この主張を信じた。

ところが、その後政府債務の対GDP比率は上がるが、日本国債金利は上がらない、むしろ下がった。

これらの財務省のいいなりの経済学者達の主張はおかしいと気付いたのが、県議時代に財政を勉強し始めたとっかかりであった。

財務省のいう財政破綻とは「政府債務残高/GDP」の比率が高くなる事を指しているようだ。

しかし、2001年末にアルゼンチンが財政破綻した際の「政府債務残高/GDP」は110%程度、

2011年頃、ギリシャが事実上の財政破綻状態に陥った頃のそれは約130%くらいだった。

2020年3月にレバノン財政破綻したが、その時は約170%、

日本は現在256.2%、何故財政破綻しないのか?(国債発行残高は2023年度末で1,068兆円と推定)

「政府債務残高/GDP」は財政破綻とは関係ないということだ。

国債の信任は、インフレ率を基準とすべきだと思う。具体的には2〜4%のインフレ率を目標とするのがいいと思う。

また、マサチューセッツ工科大学の経済学名誉教授のオリヴィエ・ブランシャールは、日本の債務比率が高いことは改善すべき点ではあるが、「日本国債の投資家層は非常に安定しており、外国人投資家が保有する国債の割合は13%に過ぎない。伝統的に、日本の投資家はより安定的である。」また、「日銀が国債の主要な保有者であり、安定した投資家の役割を果たし、他の投資家と一緒に売却しようとはせず、他の投資家が売却したときには進んで購入するだろう。」と書いている。

また、経済成長するためには失業率も大切で、日本の現在の失業率は2.5%、完全雇用に近い。

これは第二次安倍政権の経済政策(アベノミクス)の成果で、安倍晋三元総理は、二度にわたった消費税率の値上げを、(消費税を上げても日本経済は成長するという)財務省が持ってきた資料が間違っていたと悔やんでいたが、消費税率の値上げがなかったら、日本はとっくにデフレから脱却して、GDPも大幅に伸びていたであろう。

さらに、金利と経済成長率との関係が最も重要で、経済成長率が金利を上回っている限り(ここ数十年続いている)、政府債務は減少に向かう。

大変長くなったが、以下の書籍を参考にしました。

中野剛志「奇跡の経済教室、第一巻、第二巻」

中野剛志「どうする財源」(祥伝社新書)

オリヴィエ・ブランシャール(マサチューセッツ工科大学経済学名誉教授)「21世紀の財政政策」(日本経済新聞出版)