自民党財政健全化本部長・古川禎久氏の財政認識は間違い

3月4日、古川禎久自民党財政健全化本部長は、マスコミの取材に応じて次のように述べたと報道があった。

【「2025年度に国と地方の基礎的財政収支プライマリーバランス、PB)を黒字化させる財政目標を堅持する考えを示した。「PB目標先送りの声もあるようだが、それは本末転倒だ」と述べた。インタビューは2月29日に実施した。
古川本部長は「内閣府の中長期試算によれば、歳出効率化の努力を続けていけば2025年度のプライマリーバランス黒字化の実現も視野に入るとされる」とする一方、「高い経済成長や税収増を前提にしており、容易な状況ではない」と指摘した。
そのうえで「日本の財政状況は世界で断トツに悪い。信認を損なわないためにも、財政健全化の努力は絶えず続けていかねばならない」と言及。「25年度のPB黒字化目標は堅持して、歳出・歳入両面の見直し努力を続ける」と語った。】

この考え方は間違いです。

まず、「日本の財政は状況は世界で断トツに悪い」との認識ですが、日本銀行のバランスシートを加えた「統合政府バランスシート」でみるとG7国中2位の極めて健全な財政です。

「統合政府バランスシート」で見る理由は、日本銀行は政府が55%出資している。さらに日銀法では、政府による役員任命権と予算認可権を定めているので、政府の子会社であると考えて良いからだ。

世界の主要先進国では、中央銀行との「統合政府バランスシート」で見るのが普通です。

だから、世界の市場から日本の国債に対する信任が高い為に、国債金利は上がらず、安定している。

マサチューセッツ工科大(MIT)名誉教授のオリヴィエ・ブランシャール教授も、昨年5月に日本で出版された「21世紀の財政政策」の中で、「まず日本国債は投資家層が非常に安定しており、外国人投資家が保有する国債の割合は13%に過ぎない。伝統的に、日本の投資家はより安定的である。第二に、現在では日銀が国債の主要な保有者であり、安定した投資家の役割を果たし、他の投資家と一緒に売却しようとせず、他の投資家が売却したときには進んで購入するだろう。」と述べている。

さらに、国債金利よりもGDP成長率が高ければ(金利<成長率)財政は破綻しない。(ドーマ条件)

日本はこの状況にある。

古川禎久議員は財務省の代弁者だが、そもそも財務省プライマリーバランスの黒字化を目標とし、こだわるのは財政破綻を懸念しているからだ。

財政破綻を回避する事は我々も同じだ。

しかし、先に書いたようにPB黒字化目標の数式の前提条件が間違っている上に、現在の日本は、国債金利GDP成長率よりも低い状況が続いている。

何よりも、政府はデフレ状況ではなく、消費者物価が上がりインフレ懸念があると見ているが、実質賃金は21ヶ月連続して下がり続けている。

さらに、消費者物価が上がっているが、これは国内需要が増加し、物不足となって起きる「デマンドプル・インフレ」ではなく、原油価格、飼料価格等の高騰、サプライチェーンの生産力低下など、コロナ禍やウクライナ戦争の影響で輸入価格が高騰したのが原因の「コストプッシュ・インフレ」であり、この状況で、金融引き締めやPB黒字化の為の財政出動縮小をすべきではない。

現行のPB赤字化は問題なく、継続してインフレ率2%が達成されるまで、日銀はもう少しの間金融緩和を続け、政府は国債を発行して財政出動をすべきです。

そうしないと、またデフレに逆戻りする。