積極財政議連からの政府への提言

昨日(4日)「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は、総会を開催して、以下の要望書を自民党、政府へ要望する事を決議しました。

最も力を入れるのは消費税減税です。

本日(5日)、世耕弘成参議院幹事長、萩生田光一政調会長新藤義孝 経済再生担当大臣へ要望活動をする予定です。

        提言書

我が国が「明日は今日よりよくなると誰もが感じられる国」となるための 総合経済対策・補正予算編成に向けての提言
~真水 20 兆円規模の補正予算を求める~

             令和 5 年 10 月4日

責任ある積極財政を推進する議員連盟

 

 岸田総理が取りまとめを指示した「物価高に苦しむ国民に成長の成果を還元し、コストカット型 の経済から歴史的転換を図る経済対策」については、物価高から国民生活を守るととともに実質賃 金の上昇を実現させ、デフレからの完全脱却による日本経済の安定的な成長を確かなものにしなけ ればならない。
 下記の政策を中心に、各種給付措置や税制、社会保障負担軽減など政策を総動員するとともに、 予備費や繰り越しを除く「真水 20 兆円規模の補正予算」を編成することを強く要望する。


         記
一、 消費税や所得税の減税措置及び、社会保険料

の減免措置を行うこと。
二、 事業者に対し、柔軟な資金繰り・経営支援を

継続すると共に、コロナ融資返済 の猶予・減免策を講じること。
三、 「地方創生臨時交付金」の引き続きの交付と、「地方交付税交付金」の安定的 増額を実現すること。
四、 食料安全保障関連予算を別枠で確保し、農林畜産水産関連予算全体を大幅に 増額すること。
五、 サプライチェーンの強靱化を図るため、国内における生産拠点の設備投資を 支援すること。
六、 子育て支援金の継続給付や児童手当の対象拡大、奨学金の返済免除や減免策 など、子育て世代の負担を減らす抜本的な支援を行うこと。
七、 国土強靭化5カ年加速化対策を早期に改定し、次期法定計画の総額を18兆円 に拡大し、インフラ老朽化対策を加速すること。
                  以上

【基本認識】
 コロナ禍における財政拡大によって国民生活と経済活動が下支えされ、国の税収、地方の税収は ともに過去最高を記録しており、積極的な財政政策の恩恵が日本全国に広がっていることは明らか である。
景気回復の端緒をつかみつつある今、我が国が「明日は今日よりよくなると誰もが感じられる国」 となるためには、物価高から国民生活を守るととともに実質賃金の上昇を実現させ、デフレからの 完全脱却による日本経済の安定的な成長を確かなものにしなければならない。
 4-6 月期の需給ギャップが 3 年 9 か月ぶりにプラス(+0.1%)に転じたことをもって、日本経 済がすでに「平時」であり、需要を刺激する経済対策を不要とする論調があるが、真の意味での需 要不足は解消されたとはいえない。実際に、4-6 月期の実質民間内需はコロナ前の 2019 年平均 を 1.8%も下回っており、日本経済はまだ「平時」とは言えないのである。
 2%の物価安定目標を安定的に達成するためには、GDP ギャップは+4%程度必要 1であり、こ れは 20 兆円程度を意味する。
 国民生活のために行うべき経済対策は、デフレ構造不況に後戻りさせる緊縮政策や目先の財政規 律の確保ではなく、2%物価安定目標を達成し 2、家計に所得をしっかり回す 20 兆円規模の思い 切った財政拡大である。
 岸田内閣の重要施策である、成長と分配の好循環を目指す「新しい資本主義」を実現する上でも、 経済成長による税収増で債務比率を徐々に低下させ、より債務管理を容易にすることこそ、「責任 ある財政規律の確立」に資するものである。
 プライマリーバランスの黒字化を金科玉条のように置く、欧米とは異なる 3日本特有の考え方は、 この国の経済を停滞させ、結果として「責任ある財政健全化」を遠のかせてきた。
 骨太の方針 2023 にある通り、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦 略を一体的に進めつつ、長らく続いたデフレマインドを払拭し、期待成長率を高めることでデフレ に後戻りしないとの認識を国民の間に広く醸成し、デフレ脱却につなげていくことが何より重要で ある。
 財政・金融双方の政策を積極的に展開し、その相乗効果により「新しい資本主義」を稼働させ、 新しい日本を切り拓かなければならない。政府の積極的な政策とその実行に向けた強いコミットメ ントが、国民の間に政策に対する信頼を醸成し、国民のより積極的な行動を導くのである。その起 爆剤となるのが、新しい発想に基づく財政資金の積極的な活用なのである。
また、日本銀行には政府との密接な連携のもと、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた 適切な金融政策運営を期待する。アクセルとブレーキを同時に踏むような愚をおかしてはならな い。現在の円安は「逆プラザ合意 4」として、国内投資を増やすチャンスである。
 実質賃金が上がらない日本経済停滞と物価高で国民生活が苦しむ中、根拠のない「財政破綻の可 能性」を恐れ、大胆な財政出動をためらう余裕はもはや残されていない。日本の明るい将来展望を 切り拓く上で、政府による積極的な財政政策が果たす役割は極めて大きい。
 岸田内閣の思い切った総合経済対策では、以下の通り、各種給付措置や税制、社会保障負担軽減 など政策を総動員するとともに、予備費や繰り越しを除く「真水 20 兆円規模の補正予算」を編成 することを強く要望する。

[参考]
1  日本のインフレ率とGDPギャップの関係を見ると、GDPギャップに2四半期遅れてインフレ率が連動する。そ して、日本のコアCPIインフレ率とGDPギャップの関係をより詳細に見ると、CPIコアインフレ率+2%に対 応する内閣府GDPギャップは+4%程度になる。(「日本のGDPギャップは過小推計の可能性」第一生命経済研究 所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト 永濱 利廣)
2 すでに消費者物価は 12 カ月連続で3%超であるが、そのうち2%程度は食料品の値上げによるものであり、国内 需給がひっ迫しているわけではない。足元のインフレ率は需給ひっ迫よりもコストプッシュの要素が大きい。
3 グローバル・スタンダードでは、景気の状態を考慮する構造的財政収支が財政規律の目安である。景気の状態を考 慮しない生のプライマリーバランスの黒字化目標は異常であり、過度な緊縮財政を招く。
4 日本銀行の金融緩和策は日本経済の助けになっており、ドル高是正に向けた 1985 年9月の「プラザ合意」とは逆方向に作用している。

5 ドイツや英国などの欧州各国では、新型コロナ下で内需を支えるため、付加価値税の減税措置が実施された。

 

1. 足元の急激な物価高から国民生活を守るための対策
・岸田総理が表明した「税収増などを適切に還元する減税制度」は、消費税や所得税の減税など、
多くの国民がその効果を実感でき、国民負担の引き下げと消費拡大につながる政策とすること。
(消費税については、諸外国で個人消費の刺激策として実施されてきた事例 5を参考に、2%の物 価安定目標を安定的に達成するまでの時限措置として、税率 5%への引き下げ等を検討すること)
インボイスが原因で小規模事業者が減収・廃業することが無いよう、免税事業者対象の経過措置 や特例措置の延長・恒久化などの抜本的支援策を実施すること。
・年度末まで継続して物価・エネルギー高騰給付金を支給するなど、国民が政府の対策の恩恵を 実感出来る政策を実施すること。
・燃油のさらなる高騰にも対応できるよう、全ての油種で少なくとも年度末まで対策を継続する こと。また、冬季を想定して補助額のかさ上げも含めて検討すること。
・急激な電気料金高騰に対応するため、全ての家庭や企業等に対して 12 月及び 6 月請求分を政府 が全額補填すること。


2. 地方・中堅中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長の実現
・医療、介護、福祉、保育等の価格転嫁が不可能な公定価格で定められる職種の賃上げを確実に行 うため、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス、調剤報酬等の大幅増額改定を行うこと。特に、 薬価の切り下げで財源ねん出をすると更なるドラッグロスが進むため、薬価の引き上げを行うこ と。また、これらの公定価格の改定に、物価スライド方式を創設し、実質賃金の目減りが起きな いような制度とすること。
・コロナ対策で不十分とされた地方公共団体の関係機関の職員について、非正規公務員ではなく正 規の公務員であることを原則とし、人件費に係る負担について地方財政措置を講ずること。
・回復傾向は見られつつも、いまだコロナ前の水準に回復したと言える状況にはなく、更には、 原料高の影響を受けて事業者が抱える課題は変化してきている。この現状に対して、柔軟な資金 繰り・経営支援を継続すると共に、コロナ融資返済の猶予・減免策を講じる。特に、政府の移動 抑制策の影響を受けた民間鉄道やバス、タクシー、航空等、公共性の高い企業については経営支 援の充実に加え、税制面での減免支援を行うこと。
・地域の実情に応じたきめ細やかな支援を行うために、「地方創生臨時交付金」の引き続きの交付 と、「地方交付税交付金」の安定的増額を実現すること。
最低賃金制度については、労働者の生活を保障するセーフティネットであるという制度の役割、 物価高を背景に中小企業・小規模事業者の支払い能力が低下している実態を十分に考慮し、社会 経済の状況を踏まえた柔軟な見直しを可能とすること。

 

3. 成長力の強化・高度化に資する国内投資促進
・日本の半導体産業の世界一完全復活に向け、大規模な支援を行うこと。

・飼料用穀物も含め、自給率の低い品目の増産・備蓄支援や利用拡大等を図るため、食料安全保障 関連予算を別枠で確保し、農林畜産水産関連予算全体を大幅に増額すること。
・農林畜産水産業生産者の事業継続を可能とするため、欧米等にならった所得補償も含め、これ までの対策以上に機動的な特別対策を実施すること。
・中国による科学的根拠に基づかない極めて理不尽な禁輸措置の影響を受ける生産物の政府によ る買上、消費拡大等、適切な支援を行うこと。
・いかなるリスクに対しても国民生活が停滞しないよう、国内における生産拠点の設備投資を支援 し、サプライチェーンの強靱化を図ること。特に医薬品不足は深刻な問題となっており、国内の 製薬、創薬に対する投資を支援すること。


4. 人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革の起動・推進
・2024 年問題やドライバー不足に対応し、二種免許取得支援、期間を限った賃金補助、トラック 輸送から鉄道貨物や内航海運へのモーダルシフトの促進等、十分な支援を行うこと。
・一時的な支援金に留まらず、継続的な子育て支援金を給付すること。児童手当は第三子以降のみ ならず、第一子、第二子もついても大幅拡充すること。
・気候変動や災害時に避難所として活用される実情に対応し、体育館を含む学校施設の空調設備設 置、災害時に適応出来る設備設置に十分な予算を確保すること。
・高等学校における ICT 教育の充実を図るため、学校 DX の対象に高等学校を明確に位置付け、 基金の新設等により継続的に推進すること。また、五カ年計画を策定し、長期的かつ戦略的な推 進を行うこと。
・若者にとっての大きな負担となっている奨学金の返済については、積極的に免除や減免策を講じ、 結婚等の人生設計の障害とならないようにすること。
・研究・学術分野で活躍する研究者たちが、安定した雇用を得て中長期的な視点に立って闊達な研 究を続けるために、大学や研究施設等の学術研究分野には十分な予算を充当すること。併せて、 博物館等についても、その本質は調査研究機関であることに鑑み、運営費交付金等の増額により 調査研究費や管理運営費を支援すること。


5. 国土強靭化、防災・減災など国民の安全・安心の確保
・資材高騰に対応し、事業量を確保するため、国土強靭化 5 カ年加速化対策を早期に改定し、次期 計画の総額を 18 兆円に拡大し、インフラ老朽化対策の加速と大規模災害への備えを促進するこ と。
・高規格道路のミッシングリンク解消や、新幹線整備への投資を抜本的に強化し、分散型国土の 形成を加速化すること。
・日常医薬品の不足が深刻化し、薬局によっては調達困難な状況が発生していることから、ジェネ リック薬品やバイオシミラーメーカーの当面の下支えと業界再編の具体的な推進策を策定する こと。