昨夜のNHKニュースの国債日銀引き受けの解説は間違い

昨夜7時のNHKニュースで、日本の国債残高の約半分を日銀が引き受けている事が危険であるかのような解説があった。

この見方は財務省見解の受け売りで、正確ではない、間違った報道の仕方だ。

私は際限なく日本国債を日銀が引き受けて良いとは思っていない。

しかし、30年もデフレ不況が続き、第二次安倍内閣発足以来10年間にわたり日銀の黒田総裁が「異次元の金融緩和政策」を行なってきたが、消費税を5%→8%→10%と2度にわたって上げてきた事によって不況から脱却していない。

政府目標の2%の消費者物価上昇目標を未だに達成出来ていない。

さらに、3年前のコロナ感染症拡大による不況対策、国債発行→財政出動で急激に日銀の国債引き受けが増えた現状ではやむを得ない。

私は、責任ある積極財政推進議連などを通じて、安倍晋三元総理と約1年間にわたりお付き合いをさせていただき、何度も「消費税増税をしても大丈夫だという(私に提示された)財務省のデータが間違っていた」、消費税増税が間違いであったという話を直接聞いた。

また、財政のプライマリーバランス黒字化を2025年度を目途とするという、カレンダーベースでの目標は廃止しなければならない。

財政出動しようとしてもあれが足枷になる、というお話も直接聞いた。

安倍元総理は、その反省に基づき、昨年(2022年)1月から「財政政策検討本部(西田昌司本部長)」の最高顧問として熱心に日本経済の回復に取り組んで来られた。

道半ばで凶弾に倒れた事が残念でならない。

日銀が日本国債保有する事によって何が問題か?

日銀が保有する国債は、満期が来たら「借り換え債」を発行して政府の借金を継続する。

国債残高は景気が良くなれば税収が上がり、国債発行が減少する事により、増加が減少する。

財務省の宣伝する「後世に負担を残す」事とは違う。後世の国民が借金を返す事にはならない。

ただし、国債の利息は政府から日銀に支払われる。

その現状を西田昌司参議院議員が昨年、令和4年4月11日の参議院決算委員会で、財務省に質した。

その時の財務省主計局の奥達雄次長の答弁は以下の通り、

「例えば平成28年の場合は、国債のその利息収入、日銀が受け取る国債の利息収入は1.2兆円、これに対して国庫納付金額は0.5兆円ということでございます。平成30年度におきましては、利息収入が1.3兆円、国庫納付金額は0.6兆円、また、直近の令和2年度で申し上げますと、利息収入は1.1兆円、国庫納付金額は1.15兆円というふうになってございます。」

日銀が政府から受け取る国債の利息は、日銀の必要経費を除いて残額は国庫に納付される。政府に戻ってくる。

現在はゼロ金利に近いから納付額も少ないが、約半分が政府に戻っている。

NHKニュースでは、この事は全く触れていない。

それでは、何故国債を日銀が直接引き受ける事を財政法第5条(下の参照)が禁止しているのか。

財政法は終戦直後の昭和22年3月に制定された。

当時の占領軍GHQの強い意向で、戦前の日本政府は、大量の国債発行で戦争経費を賄ったという考え方の下で、2度と再び日本が戦争に踏み切る事の無いように国債発行に制限を設けたものである。

財政法4条1項但書(下の参照)で、建設国債の発行は認めている。

特例公債(赤字国債)は、建設国債と同趣旨で国会で特別法を作り、期間を定めて認めている。

NHKニュースではこの説明もない。

マスコミは、財務省に逆らうと情報を出してもらえないので、財務省の言いなりになっていると聞いた事がある。分かっていても思いのままに報道出来ないジレンマも聞いた。

また、西田昌司参議院議員の3月15日の参院財政金融委員会での質問で、銀行が国債を購入する資金は、手持ちの預金からではなく、日銀の当座預金(準備預金)から民間銀行へ供給されるという事も、日銀も財務省も認めた。そして、現在日銀の当座預金は潤沢に用意されている。

という事は、財務省の言う、2千兆円の民間金融資産が減少すれば、国債購入資金が減少するという説明は間違っている。

但し、保険会社や個人が国債を購入する場合には、日銀の当座預金を使えないので、預金と国債が置き換わることになるので、これとは異なる。

我が国は30年間にわたり、財務省の財政健全化を優先する政策を与党が行なってきた為に、GDP成長率はゼロ、賃金も上がっていない。

このまま財務省の言う財政健全化政策を続けていると、日本経済の成長は望めない。

国力を測る指標はGDPだが、数日前のインターネットニュースで、日本のGDPは近いうちにドイツに抜かれて第4位に転落するとのニュースを見た。

私は昭和50年代後半から平成9年頃にかけてのバブルの時代を東京で経験した。

不動産業界、建設業界、証券業界の狂乱ぶりを見て、こんな状況がいつまでも続くはずがないと思った。

しかし、ここ数十年の日本経済の低迷ぶりを見ると、バブル時代がまだマシだったか、バブルを軟着陸させる方法があったのではないかとも思う。

 

【参照:財政法】

第四条 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
② 前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。
③ 第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。
第五条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。